STORES Product Blog

こだわりを持ったお商売を支える「STORES」のテクノロジー部門のメンバーによるブログです。

数字を動かすチームになるために──現在地と目的地の見える化

はじめに

こんにちは、STORESの西村(@jnishimu)です。

STORES(ストアーズ)では、2025年3月から、キャッシュレス決済・POSレジ・ネットショップ・予約システム・モバイルオーダーなどを “まとめて” 使える新しいプラン「スタンダードプラン」を開始しました。これに伴い、「このプランを世の中の中小事業者の“スタンダード”にしていく」という大きな目標のもと、2025年4月から社内の横断プロジェクトが立ち上がりました。

マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトマネージャー、エンジニアといった多職能のメンバーが連携しながら進めていくこのプロジェクトにおいて、私たちデータ本部が担うのは「見える化の仕組み」を整え、共通認識を支えることです。

この記事では、「見える化」の中でもとくに基本となる「現在地の把握」と「目的地の設定」について、実際に取り組んでいること、運用して感じたポイントなどを整理してご紹介します。

なぜ「現在地」と「目的地」が必要なのか

プロジェクトの中で特に意識したことが「現在地と目的地を見えるようにすることが、行動を考えるための前提になる」ということです。

スタンダードプランを世の中のスタンダードにするためには、当然多くの方に知ってもらい、使ってもらう必要があります。では、どれくらいの事業者に使ってもらうのか?できるだけ多くの事業者に使ってもらうに越したことはありませんが、それだけでは動き方は決まりません。「目標が100なのか、10,000なのか」で、必要な手段やリソースはまったく変わってくるからです。

これはプロジェクトの推進に限らず、日常的な行動でも同じです。たとえば、どこかに移動するときに

  • 現在地がどこか
  • 目的地がどこか

これがわかると、徒歩で行くのか、自転車か、電車か、タクシーかなど、──最適な手段が自然に選べるようになります。東京(現在地)から大阪(目的地)に移動するときに、徒歩という選択肢はほとんどの場合移動手段の候補から外れるはずです。 プロジェクトも同じで、「いま100の地点にいて、目標が110なのか、それとも200なのか」で次にやるべきことが変わってくるのです。このように、目的地が明確になると、手段が絞られるのです。これはプロジェクトや事業でもまったく同じ構造であり、まずゴールを明確にすることが、手段選択の前提になります。

「現在地」がなければ、手段の精度は上がらない

次に必要なのが「現在地」の把握です。

どれくらいの距離があるかによって、必要なパワーも変わります。たとえば目標が「100」のとき:

現在地と目的地

現在地が「90」であれば、残り10。リマインド施策やキャンペーン延長といったあとひと押しの工夫で届く可能性があります。

一方、現在地が「10」であれば、90も足りない。そもそも商品構造や導線から見直さなければならないかもしれませんし、使えるリソースや日数も変わってきます。

このように「現在地」と「目的地」がわかると、その差が見えるようになり、次に取るべき手段も自ずと明確になります。

「差」が見えると、議論が具体化する

差が見えることのメリットは、「何を議論すべきか」が自然と定まる点です。

数字だけを見せても、チームは一方向に動きません。しかし、「今は100、目標は200、つまり差が100ある」という状態が明確になると、「このままでは足りない」「何かを変えないと届かない」といった認識がチーム全体で揃います。

実際、Slackでは毎朝、主要な指標の「現在地」「目標」「前日比」などを自動で投稿しています。すると、目標と現在地の差に応じて自然と気づきがSlackに投稿され、具体的な施策や議論が始まります。

差が小さいときは「どのチャネルでもう少しだけ増やせるか?」

差が大きいときは「チャネルを増やす?商品自体を再構成する?」

このように、目標と現在地の「差」がコミュニケーションの起点になり、会話のレベルが「施策」に落ちていくのです。

フェーズごとに「目的地の切り方」を変える

プロジェクトの中では、ゴール自体の構成もフェーズによって切り替えています。

売上の基本式は非常にシンプルで、「アクティブユーザー数 × ARPA(1ユーザーあたりの売上)」で分解できます。この構造を使い、

  • 4〜6月:ユーザー数の純増に集中。ARPAは“下がりすぎないか”をガードレールメトリクスとして監視するだけにする。

  • 7月以降:ユーザー数の増加や業種の構成に応じて、ARPA向上もセットで考えていくフェーズに移行する。

といった形で、目的地を時期ごとに切り替えて追うようにしています。すべてを同時に追うと施策が分散してしまうため、「いま何を重視すべきか」を明確にする設計です。

見せる場所、見せ方も重要

見える化の仕組みそのものも、できるだけプロジェクトメンバーの毎日の業務の動線に置くようにしています。

  • Slack連携:毎朝定時に主要指標が自動投稿され、数値変動に即対応できるためのもの。

  • Looker Studioダッシュボード:社内ポータルの目立つ位置に固定し、誰でもすぐにアクセスできるためのもの。

また、Slackではあえてプロジェクトで1チャンネルだけを用意し、ワーキンググループ単位に分けていません。情報量は増えますが、全体の文脈と議論の流れが一気通貫で追えるという利点が大きいと感じています。

「差」は常に更新され続ける

最後に重要なのは、「見える化」は静的なレポートではなく、“動くもの”であるべきという点です。

  • 現在地は毎日変わる

  • 目標も必要に応じて見直される

  • ゴール設定が更新されれば、差の意味も変わる

私たちは、これらの更新をSlack botやダッシュボードを通じて、チーム全体が自然と認識できる状態を目指しています。

おわりに

現在地と目的地が定まれば、次の一手は自然に見えるということが伝わったでしょうか。

どんなに複雑なプロジェクトでも、「いまどこにいるのか」「どこへ行きたいのか」「その差はどれくらいか」──この3点が揃えば、手段の選択は自然に見えてきます。

“ゴールを決めよう” “数字を見よう”という言葉が形骸化しないためには、「差を毎日見える場所に置く」「その変化にチームで反応できる環境をつくる」ことが大切です。

見える化は手段ではなく、行動を導く「インフラ」です。今後も、この基本構造を活かしながら、プロジェクトのフェーズに応じた改善を進めていきます。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

STORESでは、今回ご紹介したような「事業の前進を、データや仕組みの力で後押しする」取り組みを、日々いろんなチームと一緒に進めています。 まだまだ道半ばですが、こういった活動に少しでも興味を持ってくださった方がいたら、ぜひカジュアルにお話しできると嬉しいです。

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