STORES Product Blog

こだわりを持ったお商売を支える「STORES」のテクノロジー部門のメンバーによるブログです。

Large-Scale Scrum (LeSS)にチャレンジしてみました (序)


テクノロジー部門CRM開発本部の上杉です。

2023年に入ってから、 社内コード 「アプリテ」と呼ばれるプロジェクトが発足し、LeSS(のエッセンス)を導入しつつ開発を行いました。また、3年ぶりに日本で行われたLeSS考案者Bas Voddeさんの認定LeSS実践者トレーニングを受講してきたので、その紹介もかねて、今回は「序」としてLeSS導入の背景や意図を紹介させていただきます。

LeSSとは?

LeSS(Large-Scale Scrum)には馴染みのない方も多いかと思いますので、簡単に概要をお伝えします。LeSSは、スクラムフレームワークを大規模な組織やプロジェクトに適用するためのアプローチです。1つの大きなチームではなく、複数の小さなスクラムチームが協力してプロジェクトを進める際のフレームワークとして、前述したBas VoddeさんとCraig Larmanさんによって考案されました。

スクラムとは?

スクラムは、ソフトウェア開発のアジャイルフレームワークで、迅速に市場や顧客の要求に対応することを目的としています。主要な役割にはプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームがあり、短期間の開発サイクル「スプリント」を中心に活動します。毎日の進捗共有やスプリントの終わりの振り返りを通じて、持続的な改善を追求します。スクラムは、短いサイクルでのフィードバックループを重視することで、顧客の要求や市場の変動に迅速に対応することを可能にします。また、チームの自己組織化を促進し、持続的な改善を目指す文化を作り上げることが求められます。

「アプリテ」プロジェクトとは?

「アプリテ」は社内のプロジェクトコードネームです。このプロジェクトは、STORES ネットショップ と STORES レジ、STORES ブランドアプリ を連携させるプロジェクトになります。そのため本プロジェクトは STORES ネットショップ を開発運営していたチームと STORES ブランドアプリ を運営していたチームの2チーム合同のプロジェクトとなり、開発に様々な形で参加したメンバーの合計でおよそ20名ほどになりました。

LeSS導入のモチベーション

オーナーさんへ価値を継続的にデリバリーすることは非常に難しいです。要求は状況によって日々変化しますし、開発チームはその要求に迅速に対応しなければなりません。LeSSなど組織にアジャイルを拡大していくフレームワークはさまざま提案1されており、アジャイルのコンセプトもアップデートされています。2 私はこういったフレームワークにこだわる必要はなく、いかなる方法でもそういった迅速さを実現できれば良いと考えている一方で、コンセプトを持たずに徒手空拳でこの状況に適応するのは非常に難しいと考えました。私たちにはアイデアやツールが必要でした。プラスドライバーがプラスネジを回せて、マイナスネジを回せないように、スクラムやLeSSには得意なところ、不得意なところがあります。

「アプリテ」プロジェクトのスタート時、いくつかのメソッドを検討しましたが、プロジェクトの規模と目的に合わせてLeSSが最適だと判断しました。前述の通り、本件の開発は2つのチームが共同で開発を行います。幸運なことに、両チームともにスクラムを実践していました。しかしプロダクトを連携させていく開発は、全社としても比較的経験が少ない状況で、開発チームは発見を通じて、連携開発における学習を積み重ねる必要がありました。導入にはLeSSの以下の原理3が決め手となりました。

Large-Scale Scrumはスクラムである

経験ベースのプロセス管理

透明性

LeSSでもっと多く

製品全体思考

顧客中心

完璧を目指しての継続的改善

システム思考

リーン思考

待ち行列理論

これらの原理はフレキシビリティの実現、コミュニケーションの促進など私たちの指向性や、現状を鑑みるとマッチしたものでありました。

LeSS 原理原則の概要 出典:https://less.works/jp/less/principles/overview

「アプリテ」プロジェクトでの成果と課題

プロジェクトベースでのLeSS導入ということで、あくまでもLeSSのエッセンスを利用するという形になりました。チーム間のコミュニケーションの向上や進捗管理の透明性が増すなど多くのメリットを実感できました。一方で、初めての試みだったことや、プロジェクトベースであったため、当然ながら完全な形で「LeSS」を導入することはできず、組織文化や既存のプロセスとの摩擦も一部ありました。本プロジェクトで行ったこと、LeSS定義との差分、これらの課題に対するアプローチ、解決策については、今後の記事(「破」・「急」)で詳しく取り上げていきたいと思います。

認定LeSS実践者トレーニングの体験

Bas Voddeさんのトレーニングは、単なる理論的な内容だけでなく、実際のプロジェクトでのLeSSの適用方法やベストプラクティスが豊富に取り上げられました。トレーニングは3日間に及び、原理の理解に多くの時間を使い、コンセプトやその具体的な適用方法を事例紹介やディスカッションを通じて習得できます。特に印象的だったのは、実際のケーススタディを通じてのグループワークです。他の受講者との討論を通じて、多くの気づきや新しい視点を得ることができました。

まとめ

LeSSのエッセンスを利用することで、大規模なプロジェクトでも迅速さを伴った開発をできると感じました。しかし、その導入には原理の理解と、適切なトレーニングや適用のための工夫、開発者のサポートが不可欠です。今回は「序」として背景やLeSS導入の意図を紹介しました。今後「破」・「急」やLeSSの適用に関する経験を共有していきたいと思います。