STORES Product Blog

こだわりを持ったお商売を支える「STORES」のテクノロジー部門のメンバーによるブログです。

マネジメントをはじめて1年経っての所感

山陰の日本酒がすきな内立(@b1a9idps)です。2023年1月から STORES 決済 の開発部門のシニアマネジャーを担うことになりました。

マネジメント業務をはじめて1年が経ったので、やってきたことや自分自身の心情について思い出せるように書き残しておこうと思います。はじめたての頃に思っていたことはこちらにあります。 note.com

経歴

かんたんに自分の経歴を説明します。現在、STORESではマネジメント業務が中心ですが、副業ではがっつりJavaを書いています。

  • 入社して4年7ヶ月
    • 入社~3年半:STORES 決済 のバックエンドエンジニアとして開発業務を行う
    • 3年半~4年半:バックエンドチームのプレイングマネジャーを担う

マネジメントをはじめて1年経っての所感

マネジメントをはじめて1年の間の、チームの課題の洗い出しから解決に向けて実行したことや自分がマネジャー・シニアマネジャーを担うまでの心境の変化について時系列で振り返ろうと思います。

マネジャー準備期(0ヶ月目)

上長に決済バックエンドチームのマネジャーを引き受けることを表明してから就任するまでに、チームの課題を洗い出して、どのようなチームにしていくかを考えていました。

  • スケジュール通りにプロジェクトのリリースができるように、タスクマネジメントスキルやタイムマネジメントスキルを向上させよう
  • チームマネジャーが全プロジェクトのマネジメントまでしなくていいように、みんながオーナーシップを持ってプロジェクトを運営できるようにしよう
  • コミュニケーションがもっと活発になるようにしよう
  • チーム全体のモチベーションをもっと向上させよう
  • 暗黙的なルールやプロダクト仕様などのドキュメント化をもっと進めよう
  • チームメンバーが満遍なくドメイン知識を習得できるようにしよう
  • チーム全員で運用タスクを満遍なく対応できるようにしよう

マネジャーなりたて期(1~2ヶ月目)

自身の目標として、先に挙げた課題が1年で解消していることプロダクションコード書きながらマネジメント業務もすることを掲げました。後者は、巷で言われている「コード書かない人に評価されたくない」ということが頭にあり、自分はそのように言われないように気をつけようと強く思っていたためです。

チーム課題の解決に向けては、これらについて取り組もうと思いました。

  1. チーム全体のモチベーションをもっと向上させよう
  2. コミュニケーションがもっと活発になるようにしよう

チームメンバーのモチベーション向上のために各人の特性の理解が必須だと思い、最初の1on1で、業務・技術・人間生活的に得意なことと苦手なことやりたいこととできるようになりたいことを聞いて、自分からどう見えるかも一緒にまとめました。(ほぼ頭に入っているのでもうこのシート見てませんが)

メンバー特性

また、コミュニケーションがもっと活発になるためには、チームメンバーの相互理解の深化が必須だと思い、週次で実施していた業務だけでなくプライベートまで含んでいるKPTを廃止して、テーマなしの雑談をする時間に変更しました。(最初は自分がファシリテーションをして5人を回しててめっちゃしんどかった...)

KPT廃止の背景

脳の疲れを感じはじめた期(3ヶ月目)

2ヶ月目の1月後半~2月中旬にかけて評価・査定やチームとチームメンバー目標設定などがあり、これをやりつつプロジェクトを複数回している中で脳がめちゃくちゃ疲れていることに気づきました。
マネジメントをやる前は、3, 4プロジェクトを並行に遅滞なく回しつつ他のこともやれていたので並行業務には自信がありました。ただ、エンジニアリングとマネジメントの業務では使う脳が違いすぎて切り替えが辛いのと、エンジニアリングをまったくできない期間があるためスケジュール面やクオリティ面でみんなに迷惑をかけることを感じ、今後はプロジェクトを担当しないことを決めました。

また、チーム作りや強化を考えるようになって採用に対する考え方が変わってきました。それまでの自分は、採用する理由について、やりたいことを早くいっぱいできるようになるという観点しか持っていませんでしたが、これに加えて、文化を構築しつつ入れ替えるのは必要チームの弱い部分を補ってくれる人やよいところを伸ばしてくれる人が必要と感じるようになりました。

チーム作り・強化がミッションに加わって採用の意味が見えてきた

そして、この頃からチーム作りの戦略的にあえて言わないようにしたことが増えてきたり、相談しづらい悩みができたりして「マネジャーは孤独」ということを感じはじめました(今は慣れたのと吐き出し方を身につけたのでほぼ感じないですが)。

チームのパフォーマンス向上に振り切りはじめた期(4~7ヶ月目)

プロジェクトを担当しないことを決めたり、チームメンバーに信頼されていることを感じはじめたりで、マネジャーとしての振る舞いに対する考え方が変わりました。
マネジャーのミッションはプロダクト開発において、自身がパフォーマンスを出すことではなくチーム全体がパフォーマンスを出せるように自身がパフォーマンスを出すことが大事だと思い、上期中にチームパフォーマンスが100%超えるようベースを整えることをはじめました。

チーム加入直後や定期的にあがってくる質問等を元に、仕様をドキュメントにまとめたり、オンボーディングプログラムを整備したり、プロセスの改善をしたりしました。エンジニアリング業務においては、緊急でないが重要なタスクを積極的にやっていました。

チーム課題の解決に向けては、これらの実現のためにプロジェクトオーナー制というものを作りました。

  1. スケジュール通りにプロジェクトのリリースができるように、タスクマネジメントスキルやタイムマネジメントスキルを向上させよう
  2. チームマネジャーが全プロジェクトのマネジメントまでしなくていいように、みんながオーナーシップを持ってプロジェクトを運営できるようにしよう

プロジェクトオーナー制にオーナーシップマインドの向上プロジェクトメンバー内での状況についての認識齟齬がないことチーム全体でのパフォーマンス向上を期待しました。 長い歴史の中で初めての試みだったしプロジェクトメンバーにあったやりかたを模索してほしかったので、プロジェクトオーナーの具体的なやりかたや利用するツールは決めませんでした。

プロジェクトオーナー制

導入から9ヶ月が経って振り返りを行いましたが、プロジェクトオーナー制はよかったため継続したいとなりましたし、プロジェクトの遅滞が減りクオリティも上がったように感じます。自分としてはプロジェクトの細部まで見る必要がなくなってマネジャー権限でしかできないことに時間を割けるようになりました。

圧倒的成長が必要期(8ヶ月目~)

上期が終わり上長からフィードバックがありました。「来年からシニアマネジャーを担えるように動いてほしい」とともに、チーム内のタスクを自分抜きで進められることやチームを跨いでの課題解決の推進などを期待値として伝えられました。
圧倒的成果と圧倒的成長が必要でモチベーションをより上げるぞという気持ちとともに、シニアマネジャー決定までの4ヶ月半でほんとにできるのかという不安もありました。

上期のメンバーの評価・査定を通して期待値を伝えることの大事さに気づき、社内向けに記事を書きました。
上期は、「期待値」という字面が「オレの」感があって抵抗があったとか自分が思う期待値が本当に組織に求められていることなのか自信がなかったとかマネジャーになって2ヶ月で伝えられた期待値は信用できなくないかとか思っており、メンバーに期待値をあまり伝えていませんでした。

上期の評価・査定が終わり、メンバーとの信頼関係ができたこととか上長が考える期待値とズレがあまりなかったことなどで自信がついたので下期はメンバーに明確に期待値を伝えました。ただ、期待値という言葉に抵抗があったので、組織やプロダクトに貢献するためのアドバイスと言い換えました。

ピープルマネジメントをはじめて半年経ってわかったこと

チームでの取り組みとしては、チーム内のタスクを自分抜きで進められるようにするために次の仕組みを作りました。

  • 運用タスクデー
    • 運用タスクを消化する日
    • 目的
      • 運用タスクの週次の割合を2割にして、プロダクトをよりよくする
      • 業務で関わるチームメンバーを増やす
      • これまで有志で行っていた運用タスクの偏りをなくす
  • 週次のタスク割合目安を プロジェクト:運用:その他=65:20:15 と決めた
    • プロジェクト:PdMなどの他チームを巻き込む長期に渡る開発プロジェクト
    • 運用:リファクタリングや不具合改修、他チームからの問い合わせや依頼対応など
    • その他:目標設定等の会社的なタスク、バックエンド定例やエンジニアリングMTGといったチーム運営にかかわるもの

自身としては、引き続きドキュメントの整理や開発環境の改善などを行っていました。その他、設計や実装のチームの方針を決めたり、自分が1番チームで知見のあるJava/Spring Bootの知見を共有したりもしました。

マネジメントしていく上で今後も意識し続けること

1年マネジメントをやってきて、今後も意識し続けることがいくつかわかりました。

  • マイクロマネジメントはしない
  • 我慢しすぎない。無理な時は無理と言う
  • ビジネスなので第一は事業の成長。これを実現するための方向性に沿う形で個々人が思っているスキルアップやキャリアアップができるようにサポートしていく
  • 人はかんたんに変わらないし、かんたんに変えられない
  • やっている業務は極力オープンにして、「何やっているかよくわからないけど忙しそう」と言われないようにする
    • マネジメント未経験の人の方が多くわからないのは仕方ないから少しでもわかってもらう

さいごに

冒頭に書きましたが、今年から STORES 決済 の開発部門のシニアマネジャーを担うことになりました。シニアマネジャー決定の連絡が来るまでは確定しているわけではなかったので、誰にも言えずにバックエンドの仕事をやりつつシニアマネジャーレベルの成果作りをする必要があり、2022年下期はかなり苦しかったです。

シニアマネジャーを意識するようになって「心身ともに常に安定せねば(安定してるように振る舞わなければ)」、「他人の悩みを聞く機会が多いから感情を持っていなかれないようにしなければ」、「もっとスキルアップをせねば」と強く思うようになり、10月~12月くらいに他人の感情が自分の中にあまり入ってこず共感ができない時期があり、よろしくない振る舞いをしてしまっていました。

12月は自分と向き合う時間を作り、周囲に対しての誠実さや感謝の気持ちが欠如していたこと成果を出すことやスキルアップすることに夢中で心に余裕がなかったことが原因だと気づけましたし、気づかせてもらえてほんとによかったなと思いました。
それからは、映像作品を見る時間を作ったり近所の公園に散歩に行ったりして、心にゆとりをもつことや心を健康に保つことを意識するようにしています。

この1年で自分もチームも大きく成長できました。冒頭のチームの課題はほぼ解消したと思いますし、これまでのバックエンドチームで状態も雰囲気も1番いいといろんな方に言われましたし自分でもそのように思います。
「内立さんマネジャーの元でもっとやりたかった」とか「内立さんの姿見てマネジメントに興味を持ちはじめた」とか言ってくれるチームメンバーがいてめちゃくちゃ嬉しかったし頑張ってきてよかったなと思いました。(正直嬉しくて泣いた)

レベルの高いお仕事が徐々に増えてきてナニモワカラナイとなっていますが、心にゆとりを持ちつつもっともっとやっていこうと思います!