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RubyKaigi登壇のきっかけ。締め切り駆動から楽しい駆動へ。【Rubyistめぐり vol.4 ima1zumiさん 後編】

Rubyist Hotlinksにインスパイアされて始まったイベント『Rubyistめぐり』。第4回はima1zumiさんをゲストに迎えて、お話を聞きました。こちらは後編です。

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フィヨルドブートキャンプでのつまずきポイントはRails

藤村:フィヨルドブートキャンプでやっていたのはRailsだったんですか?

ima1zumi:そうですね。その時に特定の言語がやりたいという理由でプログラミングスクールを選んだわけではなくて、まず転職が目的でした。転職できそうで自分の条件と合ってるところがフィヨルドブートキャンプだったっていう順番なので、RubyRailsをやりたくて入ったわけではなかったですね。

藤村:最初にやってみた時の感触とか初期の印象とか覚えてますか?

ima1zumi:フィヨルドブートキャンプを始めた当初で言うと、その当時はCSSから入ったんですよね。以前はCSS上級というプラクティスがあって、ブログみたいなページのデザインを自分であてなさいという内容でした。唐揚げの写真をちゃんとしたサイズに収めるとか、変顔をした人の写真をきれいな丸にくり抜くとか、CSSだけでメールのアイコンを作るとか。そんなのをやっていて、なかなか大変そうだと思った記憶があります。

藤村:コンテンツの癖が強めですね。

ima1zumi:machidaさんの趣味が出てたのかなと。

藤村:そういうことですね。順調にフィヨルドブートキャンプは進められたんですか?

ima1zumi:いやー結構モチベーションが下がったりはしましたね。覚えているのがRailsを始めた頃、自分のrails newしたアプリにdeviseを入れたり、I18nやkaminariを入れていくんですけど、あまりに便利すぎて。

直前のプラクティスがSinatraで簡単なサーバを作ってみよう、サービス作ってみようって感じだったので、それからのジャンプがすごすぎて。え、こんな簡単にできるの、でもなんでこれが呼ばれてるのか全然わからないとモヤモヤして。Railsのところで苦戦した思い出があります。

藤村:なんとなくこの裏でとんでもないことが起きてるだろうっていう想像がつくというか、気になっちゃう感じではあったわけですね。

ima1zumi:例えばControllerでcreateが書かれていると、なぜかアクセスができると。routesとcreateが書いてあるだけでできるっていうことに引っかかって。なんでこうなってるのか全然わからないし、これで進めていいのかわからないと思って停滞してました。

藤村:そこまでくると、ライブラリのコードを読むまであと一歩みたいなところまで来てると思うんですけど。

ima1zumi:いや、見てもわからないです。

藤村:まあ最初はそうですよね。

ima1zumi:RailsAPIドキュメントからGitHubへ飛べるので、そこから見にいってはみたんですけど、まずここがどこかわからない。MVCもよくわかってなかったんですね。なので、葉っぱの先っちょを見て全体が見えないと悩んでるような時期でしたね。

藤村:なるほどな、Railsだと木がめっちゃでかいですもんね。今となってはRubyに深く入っているわけですけど、深入りするきっかけがあったんですか?

ima1zumi:フィヨルドに入った時からRubyRailsでお仕事をすることになるんだろうなと思っていたんですけど、きっかけという意味だとRubyコミュニティに行き始めてからですね。その時、私のフィヨルドの先輩がこの辺まで来たらRubyコミュニティに行っちゃえばいいよって人の背中を押しまくってくれて。

藤村:初めてのRubyコミュニティは何だったんですか?

ima1zumi:確かSendagaya.rbです。フィヨルドの先輩がいたり、フィヨルドの人がよく行ってたので、行ったんですけど、その時はコロナ禍だったんですよね。なので全部オンラインでした。

藤村:そっか、コロナになってからなんですね。

ima1zumi:フィヨルドに入ったのが2019年の10月です。

藤村:コロナの直前ぐらいですね。

ima1zumi:明大前にあったフィヨルドのオフィスに行って、その時の同期とは会ったりはしてたんですけど、RubyとかRailsを学びはじめた頃にはもうコロナ禍でしたね。

藤村:3、4年ぐらい前の出来事なんですね。

ima1zumi:そうですね。

文字コードとの馴れ初めは家族の絵文字

藤村:フィヨルドブートキャンプで唐揚げの画像サイズを調整して、Sendagaya.rbに行ってと、そこから文字コードまでは距離があるような気がするんですけど、文字コードとの馴れ初めは?

ima1zumi:Unicodeに家族の絵文字があるじゃないですか。3人だったり4人だったりする。フィヨルドブートキャンプで、家族の絵文字は特殊で、いろんな文字が合体してできていると聞いたんですね。「へぇ」と思ってIRBに入れたら、IRBがクラッシュしました。クラッシュするのはさすがにバグかなと思って、Issueを報告したんです。

その後、どこかの地域rbにReline、IRBのメンテナーである糸柳(aycabta)さんが来て、この問題はこうやったら解決できるはずだ、やってみないかと言われまして。丁寧に教えてもらったのもあって、それならやってみたいなと思って、やり始めたんですけど、家族の絵文字を入れるとなぜクラッシュするのかをわかるためには文字コードの知識が必要だったんですよね。で、『文字コード入門』*1っていう本を読んだりして調べ始めたらこうなってました。

藤村:理論上はわかる。『文字コード入門』は、そこそこボリュームがある本じゃないですか。しかも割と文字コードっていう特定のトピックですが、あれを読むことに対してひるむ感じとかなかったんですか?

ima1zumi:何回も途中でやめたりしたんですけど、メインフレーム時代の漢字を入力するのもひと苦労みたいな、苦しめられた経験が肌身に染みつきすぎてしまっていて、これは何なんだろうなってずっと思ってたんですよね。

藤村:字の苦労を早い段階から知っていた感じですよね。コンピュータにおける字の裏側が透けて見えつつあった状況ではあったというか。

ima1zumi:メインフレームのエディタがボタン一つで文字のバイト列を出してくれる仕組みがあったっていうのも、興味を持っていた理由だったかなと思います。

藤村:簡単に裏側が知れる仕組みがあったのがいい入り口だった。

ima1zumi:あとプリンタ向けの漢字は見えないんですけど、見える漢字も入力できて。ただ基本的にEBCDIC(イビシディック)なので漢字を入力するときは、2バイトじゃないと入らないので、文字コードのモードを変換しますと。

私がやってた環境だと漢字を入力する前に1バイト、ここから漢字を始めますっていうフラグが入って、2バイトの漢字が続いて、漢字を終わるときにも終わりますっていうフラグ1バイトが入る環境だったんですよね。終わりの1バイトを間違って消しちゃったりするとすべておかしくなる。そんな環境に毎日触れていたので、なんなんだろうなこれってずっと思ってました。

藤村:なるほどな。じゃあ、その状態で『文字コード入門』を読むと、なるほどみたいな。

ima1zumi:とは、ならなかったですね。シフトイン・シフトアウトはちょっと難しすぎて最初はわからなかったです。

藤村:とはいえ一生懸命読んで、家族の絵文字の問題を解決するところまでいったってことですよね。

ima1zumi:そうですね。最終的には、糸柳さんにだいぶ助けてもらいました。その時にあった問題は、カーソル位置がバグっていたことです。Relineは入力中のカーソル位置はここですという情報を持ってるんですけど、家族の絵文字は4人の家族だったら7文字分あるので、カーソルが右に7文字分ずれている状態だったんですよ。

ただ文字を消した時はgrapheme cluster(書記素クラスタ)を使って1文字分を消していたので、7から1文字分、2バイトを消して5バイト分ないところにカーソルがある状況になっていました。なので、入力する時もgrapheme clusterを使って、これは7文字あるけど、幅的には2文字分です、消す時も2文字分です、というように辻褄が合うように修正しました。

藤村:それをやると、文字に夢中になるまではいかないけど、色々やりたくなってきたんですか?

ima1zumi:文字コードって知識として役に立つ場面は数ヶ月に1回ぐらいはあるんですけど。でも、日常のコーディングで役に立つ知識じゃないですね。それこそ一番役に立ったのは、UTF-8をmruby/cに入れる実装してた時に、今までの知識が全部活きました。

藤村:仕事だと、そうですよね。ほとんどは使わないというか。

ima1zumi:使わないですね。

藤村:家族の絵文字のことをやっている頃は、まだフィヨルドブートキャンプで学習中?いつからRubyで仕事をするようになったんですか?

ima1zumi:その問題を踏んだのが確か2020年の秋頃で、永和システムマネジメントに就職したのが2021年1月でした。なのでフィヨルドブートキャンプの終盤ぐらいに家族の絵文字の問題と遊んでいて、永和に就職したって感じでしたね。

しおいさんを応援する会の影響を受けてRubyKaigiにプロポーザルを提出

藤村:メインフレームの世界から出てRubyで仕事するようになってどうでしたか?

ima1zumi:最初は文化の違いというか、今も戸惑っているかもしれないのは、金融系って絶対にバグを起こしてはいけないっていうのがすごい強いんですよ。コードの読みやすさより前に、このコードが絶対に不具合を起こさないことの方が重要。そんな世界なので、Webの世界の壊れちゃってもすぐ直せばいい、そういうフットワークの軽い感じに慣れるのに時間がかかりましたね。

藤村:こういう可能性はあるけど大丈夫だろうって踏んで進めるみたいなのとちょっと違いますよね。

ima1zumi:メインフレームの世界って、ファイルのサイズが最初に決まっちゃうんですよ。見積もりをして、これはこの年数でどれくらい増えるか、これくらいのファイルサイズをとっておいて、1年に1回増加分を監視して、溢れないかを見てました。すべての物事の上限値が気になるんですよ。

藤村:Amazon Aurora Serverlessとかあるじゃないですか、ああいうのとか見るとうわーって感じがするんですけど。

ima1zumi:そうですね。

藤村:そんなに簡単に大きくなるのかみたいな。

ima1zumi:そういうギャップはありましたね。

藤村:家族の絵文字の次はどんなことに取り組んでたんですか?

ima1zumi:家族の絵文字にハマったきっかけにBuriKaigi絵文字の話をしたんですよ。絵文字にはこんな種類があって、例えば囲み数字の絵文字はこういう文字で成り立っていて、こういう問題を起こしやすいみたいなのを発表しました。それが目に留まったのか、RubyKaigiにプロポーザル出してみないかとRubyKaigi Takeout 2021の時にお誘いを受け、じゃあやってみようかなと。

実はしおいさんの影響というか、しおいさんを応援している人の影響を勝手に受けてたんですよね。しおいさんを応援する会がその年のNishitetsu.rbで行われていて、2人ぐらいが「しおいさん、RubyKaigiのプロポーザルを出しなよ」って1時間くらいずっと言っている会があって、それを聞いてたんですけどね。

藤村:波及してますね。

ima1zumi:それを聞いていて、プロポーザルってちょっといいなと思って、背中を押してもらうこともあったので、その時に自作文字コードを作ってRubyに入れてみるっていうのをプロポーザルで出して通ったので、それをやったりしてました。

藤村:転機になったのは家族の絵文字とRubyKaigi。RubyKaigiのプロポーザルはどう準備していたんですか?

ima1zumi:しおいさんを応援する会が、プロポーザルの締め切りまで1週間か2週間、すごいギリギリだったんですよね。 自分がプロポーザルを出そうって決めたのも、締め切り1週間前とかなんですよね。

その時は、Rubyの文字について関心を持っていてアンテナを張ってたので、2020年にRuby文字コードを新しく追加するというPRを知っていました。そのPRを見たら、修正しているファイルは3つくらいで、多分1バイトの文字コードだったと思うんですけど、これをやったら追加できるんじゃないかなと思っていたので、軽くやってみて出した感じです。

藤村:じゃあ出すときには、ちょっと手を動かしてた?

ima1zumi:たしか。

藤村:なんかスムーズな感じでお話を聞いていると、まあそうだよねという風に聞こえてくるんですけど、多分そうではないことが多いんだなって気もしてます。プロポーザルを出してから実装を始め、本格的にやっていた感じで。詰まったりしましたか?

ima1zumi:実装自体は詰まらなかったです、Rubyは1バイトの文字コードを追加するのはすごく簡単なので、2バイトにしなくてよかったなって本当に思うんですけど。1バイトだったらテンプレートみたいなのがあって、それに乗っかってやると割と簡単にできます。が、なぜそうなるかを調べるのにすごい時間かかりましたね。

藤村:それがRubyKaigi 2022?

ima1zumi:RubyKaigi Takeout 2021、オンラインの時ですね。

藤村:RubyKaigi 2022の時も喋ってらっしゃいましたよね、その時は何を発表してましたっけ?

ima1zumi:RubyKaigi 2022はString#splitを高速化したいみたいなでしたね。

藤村:そのプロポーザルを出す時は、Rubyコミュニティとの関わりがそこそこあって、Asakusa.rbに行ったりもしてましたか?

ima1zumi:でもその時ってまだオフラインが復活してなかったので、オンラインで行ったり、行かなかったりって感じでした。

藤村:なるほど。でも、なぜima1zumiさんが文字のことをそんなにやるようになったんだろうっていう謎が今日解き明かせたのが、僕的にはよかったし、なるほどなーみたいな感じでしたね。

ima1zumi:伝わってよかったです。この話は結構聞かれるんですけど、説明を簡略化すると全然伝わった感がなくて、今まで伝わったのはメインフレーム経験者だけでした。

藤村:そもそもメインフレームとはみたいなところからメインフレーム経験ない人には話さないといけない。僕もまあないけど、それにちょっと近いもの、閉じたコンピュータの環境を探してからなんとなくわかったみたいなところでした。ありがとうございます。

楽しい駆動でやっていきたい

藤村:経緯の話をつらつらと聞いてきて、その後のmrubyの話も伺いたいんですけど、時間もだんだん迫ってきているので、逆に今の話を聞きます。最近はどんなことに関心がありますか?

ima1zumi:メタ的な話になるんですけど、自分で自分のやりたいことを決めることに関心があります。周りからこれやってみなよって言われて、よしやるかぁって感じでやることが多かったので、自分でやりたいことを決める。文字コードのことはほっといても勝手にころころ転がっていっちゃうんで、もういいかなと思って。自分で自分が何をやりたいのか考えて決めることに関心があります。

藤村:何らかの外的な影響を受けて、自分のやることが決まっていることが多いと思ってるんですよね。だから本当に自分がやりたいことを探すのって、実は難しいんだよなぁと思いながら聞いてました。

ima1zumi:ピュアな自分の心というよりは、義務感で自分を駆動していることが多かった。先にやること決めちゃって、そこに追い込むというか、そうじゃなくて自分がこれが楽しいからこっちに向かって頑張ってるし、努力している。義務感じゃない駆動、ここ3年間は締め切り駆動を浴びてたので、そうじゃない方法で自分を駆動させたい。

藤村:自分の内なる声はどうやって探してるんですか?

ima1zumi:この1ヶ月ぐらいは、とにかくその瞬間やりたいことをただただやっていました。そうしてると、この1ヶ月ぐらいは仕事以外だと全然プログラミングをやってなくて、ひたすらソシャゲをやってるみたいな時期だったんですけど。

でも、最近またやりたい気持ちが自分の中で温まってきたのを感じています。今年、私はIRBとRelineのコミッターになったんですけど、全然活動してなくて。IRBとRelineのコードを知ってたり、作れるからなったというよりは、メンテナーが不在なのでなったということがあって。なのでコードは全然知らないんですよね。

コードは知らないけど、PRとかIssueはたくさんあって、それをやっていかなきゃいけないって思うのが、自分の中で重荷になっていた部分があります。でも、私IRBとRelineが好きなんですよね。糸柳さんが私をRubyコミュニティに引き込んだ第一歩だったというのもあって、メンテナンスができないから打ち捨てられることにはしたくないなって思いがすごくあって。 でも自分の力では端末もIRBも全然わからないし、力も足りない。仕事のコードだと、Railsをやってることもあって、大体はわかるからApproveが押せるんですけど、IRBとRelineだとこれで直っているのはわかるけど、何もわからないみたいな感じなんですよね。そこのギャップが自分の中で大きくて、ちょっとしんどいなって思う時があったんですけど、でもやっぱりやりたいなって思うんですよね。

Unicodeは大体仕様があるのでいいんですけど、端末とか全然知らないし、仕様がない世界で、やっている人も少ないからドキュメントも少ない。GNU Readlineとかを読んで、自分で考えていかなきゃいけない世界だと思っているんですけど。コードを知らないし、コードが動くバックグラウンドも知らないけど、やっぱり自分がやっていきたいなと思って、今はやっています。

藤村:歴史がつながって自分がやるべきだろうって思える状況になってきたみたいな感じですかね。

ima1zumi:そうですね。

藤村:端末は難しいですよね。

ima1zumi:端末は難しい、何もわからないんですよね。

藤村:端末なぁ、僕もそんなにやってないですけど、端末は難しいってパッと閉じたことありますよ。Haskellのライブラリか何かを触って、うわーって思って。みんな、readline以外のものを作って入れようとするんだけど、ちゃんと動いてなくてreadlineに戻るっていうのをよく見てて、大変だなと。

ima1zumi:それで言うとRelineはすごいんですよね、readlineを置き換えたので。

藤村:Haskellは多分失敗?どうなんだろうな。まだ使われてるのかな、自前実装をやったりしましたね。じゃあこれからしばらくは端末に向き合う。

ima1zumi:端末に向き合いたい。

藤村:いいですね、なんかテーマがちゃんとあるというか、人生これをやっていこうみたいなのがあると、生きてるのが楽しいですよね。

ima1zumi:義務感じゃなくて、楽しい駆動でやっていきたいですね。

正規表現エンジンを作ってみたい

藤村:プログラミング以外だと、他に何か最近ハマってることはありますか?

ima1zumi:これを話そうと思っていたことがあったような気がするんですけど、思い出せない。ここ10年くらいハマっているもので言うと、コーヒーを淹れることにずっとハマってますね。

藤村:さっきちらっと話しましたね。これ以上話すのはもったいないのと思って、あんまり話さなかったですけど。豆を挽いてる?

ima1zumi:電動ミルで朝に挽いて、大体、最近はクレバードリッパーっていう浸漬式、漬けておくようなドリッパーで淹れてることが多いです。

藤村:何杯くらい?

ima1zumi:1回で400mlぐらい落としてます。

藤村:それを分けて飲むみたいな感じですよね。いいですね。家で仕事ですよね?

ima1zumi:そうです。フルリモートです。

藤村:コーヒー飲むといいですよね。プログラミングで他に興味があるというか、コンピュータ全般でもいいですけど、何かありますか?端末文字みたいなところ以外で、時間があったらやってみたいなとか。

ima1zumi:正規表現エンジンを自分で作ってみたい。

藤村:わかります。RubyKaigi 2023を見て、火が付きますよね。

ima1zumi:付きますね。

藤村:『正規表現技術入門』は読みましたか?

ima1zumi:読んでないです。

藤村:あれ、めっちゃ面白いんです。想像以上に面白かったのでおすすめです。自分の正規表現エンジンを作れたらいいですよね。

ima1zumi:あと、CRubyのStringのコードを読んでいると、最終的にOnigmoの構造体に行き着くんですよね。OnigEncodingTypeST。いろんなコードを読んでたどり着くんですけど、これは何なんだろうってずっと思っている。なので、Onigmoも読みたいし、謎の構造体も探ってみたいですね。

藤村:やっぱり文字ですね。

ima1zumi:そうかもしれませんね。

バイトと何かの組み合わせに興味がある

藤村:仕事に限らないかもしれないですけど、コンピュータやプログラミングのことをやる時に、心がけていることとか習慣みたいなものはあったりしますか?

ima1zumi:プログラミングっていうわけじゃないんですけど、私はオープンにできることはオープンにするっていうモットーでやっています。ちょっとした今日学んだこととかちょっと詰まったことみたいなのは、できるだけインターネットから検索可能なところに置いておきたいと思っていて、Scrapboxにちまちま書いています。

藤村:それで(検索に)引っかかって、人と何か縁が生まれたり、何かを教えてもらったりすることってありますもんね。

ima1zumi:そうですね。同僚からこの記事見たよと言われたりします。

藤村:あと僕が聞いてみたかったのは、新しいことを理解する時、どんなアプローチでやってますか?

ima1zumi:苦手なんですよね。新しいことをガっと学べる人っていると思うんですけど、私はそういうのが難しいタイプで。なので、心をかけているのは、ひとつは興味を持ったことにアンテナを張って、これってどうなってるんだろうと思ったことをそのままにしないで調べるようにしています。そういうのって枝葉ではあるんですけど、でも自分で興味を持って調べたことって頭の中に残るんですよね。それがいつか点と点が線になって、面になることを期待しています。あとは、これをやると報酬があるぞっていうのを維持して自分の中の好奇心を腐らせないようにしたいなと思っています。

藤村:メインフレームでバイト列を出してっていう話を思い出したんですけど、断片的な知識や感覚を総合して理解につなげているタイプなのかなと勝手に想像しました。

ima1zumi:そういうタイプかもしれないですね。

藤村:体系的な本を一番上からバーッと読んだらわかるっていうよりも、さまざまな角度から体験していくと最終的にバッとわかって、体系的な本は最後確認のために読む感じなのかなっていう想像をしましたね。

ima1zumi:多分そういうタイプですね。

藤村:プログラミングってやっぱり動かせるから、それがやりやすいですよね。

ima1zumi:そうなんですよね。

藤村:経済学とかだとやれないですもんね。今後の展望を聞きたかったんですけど、さっきちらっと聞けたような感じがしますね。

ima1zumi:はい、そうですね。IRBとRelineをわかっていきたいですね。あと文字コードでいうとUnicodeは最果てを見たい気持ちがあります。Unicodeは仕様として決まってるので、あるもので限界が決まってますと。年々バージョンアップはされてますけど、全部見たら全部わかるんじゃない?みたいな気持ちがあって。

藤村:それはだいぶかっこいいですね。

ima1zumi:仕様書がめちゃくちゃあるので壮大な夢なんですけど、でもそういう野望はあります。

藤村:そういえば、自然言語なり人工のプログラム言語に興味は向かなかったんですか?

ima1zumi:たぶんバイト列に興味があるのが根底というか、バイトと何かの組み合わせなんですよね。なので、もうちょっと抽象的な言語よりはコンピュータの世界の中での文字に興味があるんだと思います。

藤村:なるほどな。アラビア語とか面白いんじゃないかなと、なんとなく思ってる。あれも2個の字が組み合わさったりしがちな言語なんで表現が面白そうだなって。

ima1zumi:あと右から左に流れるっていう。

藤村:そうそう。面白いと思う。

ima1zumi:実装が大変そうですよね。

藤村:実装は大変ですよね。ああ、そっか。端末のことを考えると。

ima1zumi:端末で右から左はできるのかな?

藤村:怖いですね。

ima1zumi:怖いですね。

IRB、Relineのコミッターとしてやっていきたいこと

藤村:あと5分くらいなんですけど、もしみなさまから質問があれば伺おうと思います。

しおい:大変興味深いお話を聞かせていただきましてありがとうございます。

ima1zumi:ありがとうございます。

しおい:ちょっと質問したいことがあって、ima1zumiさんって人前に立つときとか発表するときとかいつもすごい堂々として落ち着かれてるじゃないですか。

ima1zumi:そうなんですね。

しおい:なるほど、自覚がなかった。その落ち着きがどこからやってくるのかが私はずっと気になっていまして、この機会にお伺いできればと思いました。

ima1zumi:えー、全然自覚がない。ずっと緊張してるんですけど、緊張するとゆっくり喋るタイプに自分をしていきました。

しおい:なるほど。そうすると、見てる人はこの人はなんて落ち着いた人なんだっていうふうに思ってしまうっていう。

ima1zumi:そう。

しおい:大変勉強になります。ありがとうございます。

松田:お話、興味深く聞かせていただきました。IRBとかRelineあたりのご活躍を拝見していると、全然何もやってないとか、全然わかってないとかっていうのは、本当ただのご謙遜で。リリースメンテナーとかやられていると思うので、めちゃめちゃやってるなと思って拝見しています。

質問なんですけど、3人ほぼ同時にIRBとRelineのコミッターになったじゃないですか。2人とも超優秀なプログラマだと思うのですが、彼らはできてない何か、彼らじゃ無理だけど私にはできそうなことって見えてたりしますか?

ima1zumi:うーん、難しいですね。ただIRBとRelineのコミッター4人の中で、一番文字コードに詳しいという自負はあります。

松田:文字の方は任せろと。

ima1zumi:それぞれみんなやりたいことが違うなと思っていて、私が最近興味のあるものだと、readlineとRelineの互換性がないことなんですね。readlineは.inputrcに設定を書けるんですけど、Relineにメソッド定義がないから反映できないことがあって、それでちょこちょこIssueが飛んできたり。あとはそのメソッドが定義されているかどうかでしか互換性があるかわからないのがちょっと面倒で、そういうのを解決したいなと思っています。

それに関しては他のメンテナーはそんなに興味がないので、関心分野がかぶらないようにすれば、やりたいことをやっていけるんじゃないかなと思ってますね。

松田:ありがとうございます。

藤村:ということで、ちょうど時間ぐらいなんですね。あっという間でした。知的に刺激的な話をたくさん伺えたなと思ったので、大変ありがたいなと思っております。

ima1zumi:よかったです。

藤村:ということでお越しいただいた皆さん、ima1zumiさん今日はありがとうございました。

ima1zumi:ありがとうございました。(完)

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*1:プログラマのための文字コード技術入門』