CTO 藤村がホストするPodcast、論より動くもの.fmの第21回を公開しました。今回は技術広報のえんじぇるとRubyKaigiの好きなところ、楽しみ方について話しました。
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「こんな世界があったんだ!」が無限に降ってくるRubyKaigi
藤村:こんにちは、論より動くもの.fmです。論より動くもの.fmは、STORES のCTO 藤村が技術とか技術じゃないことについてざっくばらんに話すPodcastです。今日は論より動くもの.fmを運営しているえんじぇるさんがRubyKaigiについて聞きたいとのことなので、来てもらいました。えんじぇるさん、こんにちは。
えん:こんにちは。
藤村:えんじぇるさん、RubyKaigiどうですか?
えん:今年初めて行くんです。
藤村:そっか、そうだよな。
えん:去年は行ってなくて、今年こそは行きたいと思って行くんですけど。RubyKaigiについてみんなが楽しそうに話してるのはたくさん聞いたんですが、実際にどういうものなのか想像がついてないし、私はその場でどうしたら楽しめるのかもあんまりわかってないので、教えてほしいです。
藤村:じゃあRubyKaigiとは何ぞやみたいなのを話してみようと思うんですけど、RubyKaigiっていうのは Rubyというプログラミング言語のトップカンファレンスなんですよ。間違いなくトップカンファレンスだと思う、断トツで。
そもそもプログラミング言語のカンファレンスって何かっていうと、いろいろあるんですけど、プログラミング言語自体のカンファレンスなんですよね。特にRubyKaigiはその色が強い。だからRailsでチーム開発をしてこうでしたとかそういう話じゃなくて、Rubyというプログラミング言語自体や言語にまつわるテクニカルなトークが続くんですよね。プログラミング言語のカンファレンスって概ねそういうものが多いと思っている。で、RubyKaigiは特に、メジャーなプログラミング言語のカンファレンスの中でも群を抜いてテクニカルなのではないかと思います。これはオーガナイザーの松田明さんの趣味もあると思うんですけど。で、めちゃめちゃ面白いんですよ。すげー面白いんですけど、正直僕も半分以上よくわからないんですよね。半分ぐらいはわかるかな、でも結構わからない話が多いですね。
えん:え?半分以上わからないけど、すごい面白いってところがわからないです。
藤村:あー。自分の理解できない話ってそんなに聞く機会なくないですか?
えん:たしかに。
藤村:ここまではわかるけど、ここから先はわからないってあんまりないじゃないですか。やっぱ僕はそういうのに興奮するんですよ。何これ、どういうこと?全然知らない世界があった!この先にはこんなディープな世界があったのか!みたいな話が、もう異常に面白いわけですよ。普段エンジニアでもそんな日常的にずっとわからない技術について言う人ってそうそういないと思うんですけど、「うーん、わからん。こうなっているってことはなんとなくわかったし、こういう仕組みなんだろうってことはなんとなく理解できるけどわからん!てかこんなのあったんだ」「こんな世界があったんだ!」みたいなのが無限に降ってくるのがRubyKaigiで、それがすげえ面白いって感じですね。
えん:なるほどー。
藤村:勉強会とかテック系のイベントって、仕事の役に立つものを求めていくとか、知見とかを得に行く観点が多いと思うんですけど、基本的にRubyKaigiは刺激を受ける場だと思っていて、目の前の仕事の役に立つために行くとかじゃないと思ってるんですよ。俺が使っていたこの技術はこんな風になっていたのか、こんなところを速くするためにこんな大変なことが行われてこんな概念が利用されていたのか、こんなディープな世界が広がっていたのかみたいなのを知ることで、自分はまだよくわかってないところがあったなぁとか。こんなにうまく作れねえなぁ、でもこんなうまく作れないけど、こんなすごいものを作っている人が目の前にいるんだよなとかを感じることで、ソフトウェアエンジニアとしての目線の角度が明確に変わるんですよ。こんな先があるのかってわかるんですよ。「俺はまだまだよくわかってなかったな、この世界のこと」って思うんですよね。
自分の理解の限界よりも先の話を聞くと、ちょっとずつ伸びてくるんですよ、筋トレみたいな感じで。ここは俺もうちょっとやったらわかるなとか、あとは自分がまだ理解できてないんだけど、RubyKaigiのあのトークでめちゃくちゃ見取り図がわかるようになったみたいなのがあるんですよね。そんな感じで自分の理解の限界を伸ばしていくのにもすごい役に立ってますね。
そういう刺激を受ける場なんですけど、それ以外もいろいろ面白くて。Ruby本体を筆頭に、自分たちが使っているライブラリの作者が勢揃いしているんですよ。Rubyコミッターは大体みんないるので、ああこのライブラリを作った●●さんかぁみたいな。あとは生身の人間が目の前に何々の作者ですって現れると、自分たちと地続きの同じ人間なんだなて感覚を得られつつ、地続きなのはわかるけど俺はここまではいけねえなっていう絶望を感じたりすることもありますね。
あとはよく言われている言葉ですけど、コミュニティっていうのがあって、Rubyコミュニティがあるんですよ。ああこういう人々が作っていたり、直接作らないところで支えている人もいっぱいいて、さまざまな人々がソフトウェアの裏側にいて成り立っているんだなぁっていうのを感じるのもすごいいいですね。
えん:なるほど。
藤村:全体的にはやっぱり刺激を受けるっていうのがすごく重要だと思います。
えん:藤村さんはRubyKaigiに行くと、ずっとセッションを聞いてるんですか?
藤村:3分の2ぐらいしか聞いてないですね。全部比較的難しい内容なので、めちゃくちゃ疲れるんですよ。ものすごく疲れるので、全部は聞けないですね。全部を聞こうとしてもただ単に頭がボーッとするだけで何も起きないことが多いので、休憩をいっぱい入れてますね。
えん:3分の1の休憩は何をしてるんですか?
藤村:ブラブラしてます。ブラブラしてるとカンファレンスホールの廊下とかで「ああ、藤村さん!」「ご無沙汰してます」みたいな感じで、みんなが勢揃いしてるんで、会うんですよ。それでああでもないこうでもないとかいう話をするのもすごい楽しいですね。あとはシンプルに、心を無にして普通に休んでるときもありますね。
えん:それぐらい積極的な休憩を取らないと話についていけないというか。
藤村:僕はそうですね。僕は集中力がそんなに長く続くタイプではないので、結構休んでますね。だいたい夜も楽しいわけですよ、久しぶりに会う人とお酒を飲んだり、お話ししたりするのもカンファレンスの楽しいところで。夜遅くまで飲んじゃったりもするから、朝つらかったりするんですよ。なので、まあ休んでます。
過去のRubyKaigiで印象に残っているセッションは?
えん:一番最初に行ったのはいつなんですか?
藤村:筑波で開催された時に行った気がするなぁ。2010年が初かも。(Past Kaigiを見ながら)ああ2010年は行きました! 顔ぶれとトークのタイムテーブルを見て、ああ懐かしいって感じですね、本当懐かしいな。
えん:13年前ですからね。
藤村:13年前かぁ。いやー懐かしいなぁ。Carl Lercheが来てBundlerの話をしてたなぁ。
えん:過去のKaigiでめっちゃ覚えてるセッションってありますか?
藤村:ああ、そうだな。僕が一番うおって思ったのは、2013年の田中哲さんのキーノートですかね。これはわかる人も少ないだろうし、わかってどうするんだみたいな話ですが、異常に面白かったですね。DBMってライブラリがあるんですよ。いろんなところで細々使われてるライブラリがあって、それがめっちゃいろんな種類があったりするのをRuby本体としてどう取り扱ってるかっていう話でしたね。
えん:Fight with Diversityってやつですか?
藤村:そうですそうです。こういうのが聞けるからやっぱ面白いですね。1ミリも仕事には役に立たないと思いますけど、本当に面白かったです。
えん:過去のアーカイブの動画も見れるから、1ミリもわからないかもしれないけど、一旦見てみますね。
藤村:そうですね。このぐらいだとわかる人も少ないので、わからない前提のコンテンツというか。松田明さんが言ってたのかな、本当にこの人しかこの部分は知らないっていう話をみんなしにくるから、リスナーも誰も知ってる人がいないんですよ。その人が唯一やっていたり、その人が最先端にいってたりするから、みんなわからないのは当然であるって話をして、なるほどねって思いましたね。
えん:それをちゃんと採択するのがすごくいいですね。
藤村:面白いじゃないですか、俺の仕事自慢みたいなやつが。
えん:Fight with Diversityもだいたい10年前だけど覚えてるぐらい印象に残ってるってことですね。
藤村:これは印象的でしたね。なんだそりゃって思いながら聞いてましたね。
RubyKaigi初心者の歩き方
えん:いい話だな。楽しみになってきたんですけど、今回初めて行く人が社内に結構いるんですよ。初心者としてはどうやってRubyKaigiを歩けばいいのかっていうのは、悩みどころでどうしようかなって。
藤村:予習はちょっとだけするといいですね。時間があるならば興味がありそうなトークについて事前にコードを見ておくとか、その背景となっている理論とかをちょっと軽くパラパラとめくっておくとかをやるとすごい楽しめるっていうのはあると思います。僕は去年はWasmの話があったのでその周りを予習しましたね。あと、意外とこれはやっておくといいっていうのは英語慣れしておくこと。前日とかその前に英語の動画を見ておいて、英語に頭を慣らしておくとすごく楽かもしれない。
えん:確かにいきなり行くとつらいかも。
藤村:そうそうそう。あとはあれかな、わからなそうなトークを聞きに行くのは重要かもしれないですね。これだったらわかりそうってやつより、これは絶対に何もわからないに違いないってやつの方が面白いと思います。
えん:そのアドバイスもめちゃくちゃ藤村さんっぽいなって思っちゃった。
藤村:やっぱわからない話聞きに行くんで、わからなそうなやつを選ぶ。あと面白いのが、興味がなかったジャンルでもエキスパートの話を聞くとヤバい!面白い!て思ってくるんですよ。だからそういう自分の興味の外のものを積極的に拾いにいくっていうのは、楽しめる遊び方じゃないかなと思いますね。
えん:たしかに。何でも詳しい人が話してるのを聞いたら、それ面白い!ってなりますもんね。
藤村:そうそう。面白いやつもあるし本当に吹っ飛ばされるやつもあるから、吹っ飛ばされることを楽しむって感じかな。マジでわからなくて、英語であるってことしかわからないみたいなレベルの時とかありましたよ。英語だなみたいな。
えん:英語に慣れるのは重要そうですね、半分くらいは英語ですもんね。
藤村:そうそう、あとは前列で聞く。ライブなので、できるだけ前に行ったほうがいいです。意外とスライドの字が読めなかったりするので、もう可能な限り最前列で見るっていうのがライブ観戦としてはおすすめですね。
えん:なるほど。ライブなのでって言われたら、それは最前列に行きたいよなっていう気持ちはわかります。
藤村:うん。あと僕は基本メモを一切取らないですね。
えん:へー。
藤村:なんかこういうのがあるんだって、脳内の引き出しのどっかに入ってればいいんですよ、僕としては。取材しに行ってるわけじゃないんで、自分の引き出しに新しい道具、地図みたいなのが入れば大丈夫なんで、メモは取らないですね。取ったほうがいいのかもしれないですけど、まあ取る余裕がないって思いますね。
えん:なるほど。メモを取ってる間に進んでいっちゃってわからなくなること、よくある。
藤村:そうなんですよ。あとなんかメモ取りながら話を聞いてると、その話は理解するっていう面ではプレーンに理解できると思うんですけど、でもこれってこういうとこあるよなみたいな話ってメモ取りながら考えられないじゃないですか。これってこうじゃね?みたいなことを考えてるとメモは取れなくなるので、自分は取ってないですね。
えん:聞きながら考える方に注力してるってことですね。
藤村:そうそうそう。
えん:行くまでに何をしたらいいのかっていうのはちょっとわかってきた。わかってきました。
藤村:わかってきましたか。なんだろ、英語に慣れる。
えん:英語に慣れるのは結構重要そうだった。
藤村:意外とそれ。英語に慣れるのと、ちょっと目星をつけて軽く予習してもいいかなみたいなぐらい。それぐらいかな。
えん:あとは友達を作りにいきますって言ってる人がいて、私もじゃあ頑張って友達作ろうと思ってます。
藤村:そうですね。いろいろ面白い人がいっぱいいるので、社内の人に頼って紹介してもらうもよし、突然声かけ事案をやるもよし。
えん:まつもとさんを見かけたら声をかけるべしって言われました。
藤村:そうですね。あとはトークした人にはよくわからないけど面白かったです、て言ってあげるとすごい喜ぶと思います。フィードバックってなかなかもらえないんで。いいなぁ、初めてのRubyKaigi、僕も行きたくなってきました。
えん:初めてのRubyKaigiはもう行けないですもんね。
藤村:そうそうそうそう。なんなんだこれは!的な感動を味わえるのが羨ましい。
えん:楽しみだな。
藤村:じゃあそんなところで終わります。論より動くもの.fm、今回はえんじぇるさんがRubyKaigiについて質問があるというのでいろいろお話しました。#論より動くもの で感想をお待ちしています。僕もRubyKaigiに行くので現地で握手しましょう。
えん:私もです!
藤村:そうですね。じゃあそんな感じで今回は終わろうと思います。ありがとうございました。(完)
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