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リーダーシップは自分の中で少しずつ育てていくしかない、歴史から学ぶリーダーシップ【ep.22 #論より動くもの .fm】

CTO 藤村がホストするPodcast、論より動くもの.fmの第22回を公開しました。今回は技術広報のえんじぇるとリーダーシップ、おすすめの評伝や自伝について話しました。

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リーダーシップの方がマネジメントより重要

藤村:こんにちは、論より動くもの.fmです。論より動くもの.fmは、STORES のCTO 藤村が技術とか技術じゃないことについてざっくばらんに話すPodcastです。今日は論より動くもの.fmを運営しているえんじぇるさんとたまにはテーマがなく話してみようという回なんですけど、どうですかえんじぇるさん。

えん:ちょうど STORES 社としては1月〜6月が上半期なので、論より動くもの.fmのはどうだったかなっていう上半期のふりかえりをしたんですけど、更新頻度が少なくて反省してました。

藤村:RubyKaigiで力を使い果たしてしまったな。RubyKaigiの後のイベントの準備が大変で、僕は形式言語の仕組みを勉強したり、LRパーサについて調べるのが大変だったっていうのも言い訳としてはあるんですよ。こういうノリの収録をしばらくやってなかったので瞬発力が劣えましたね。

えん:テーマがあるとそれについて話さなきゃってなるから、大変ですもんね。

藤村:話したいというよりか、どこかで記事とかに書きたいなと思ったことがあって。ひょんなことから、千種さんっていう日本のマッキンゼーで働いていてビジネスの世界でめちゃくちゃ大きな功績を残した方、DeNAの南場さんの元上司だった人なんですけど。その方と知り合って勉強会でご一緒させていただくっていうのが10年前ぐらいからあったんですよ。僕は参加率もそんなに高くなくて真面目な生徒じゃなかった面はあるんですけど、そこですごい印象に残ってる会があって。

えん:千種 忠昭さんという方ですか?

藤村:そうです。経営者とかマジメントの人を育てたいという思いが彼にはおそらくあって、リーダーシップについて学ぼうという機会があったんですよ。課題図書としてこれを読んで、みんなで感想を話そうって出してくれたのが、ニクソンが書いたニクソンと同世代の国家元首、ドゴール、アデナウアー、周恩来などの評伝なんですよ。

えん:本のタイトルは?

藤村:『指導者とは』って本ですね。これが想像の100倍ぐらい面白くて、リーダーシップってあるじゃないですか。マネジメントとリーダーシップって結構違って、マネジメントの話はみんなするけど、リーダーシップの話はあんまりしないなと思ってます。リーダーシップの方が圧倒的に重要で、マネジメントは能力として身につくけど、リーダーシップって少しずつ自分の中に育てていくしかない。一貫性みたいなのもあったりするし、もっと難しいなって思ってるんですよね。

千種さんのお題がこの本なわけですよ。僕はふと気づいたんです。世界でリーダーシップポジションみたいな仕事をしてる中で、一番大変そうなのは国家元首だなって。ああ、確かにCTOは大統領より楽だわ、プレッシャーが少ないわっていうのを思って、(大統領は)経営者より大変だわって。ニクソンの時代って冷戦中なんで、世界がどうなっちゃうかわからないし、核戦争が起こるかもしれないみたいな時代だったわけですよ。

その中で国家元首をやるって、どれだけ大変なんだろうみたいな気持ちで本を読んでいると、参考になる部分とならない部分がほとんどなんですけど、参考にはならないけど、最終的にはこういう感じなんだなというのが見えるというか。面白かったですね。

いろんなテーマがあって、今読み直してもいろいろ気づきがある本なんですけど。やっぱり人格的な一貫性とか高潔さは重要なんだなっていうのは、この本を読んで痛感しましたね。あとやっぱり一貫したビジョンがあるかないかもあるなと思っていて、そういうのが重要なんだなって思ったのと、同時にニクソンがまじてドゴールのことを好きすぎて、ガチ恋なんですよ。 ドゴールにガチ恋すぎて、すごい愛が伝わってきてよかったですね。ドゴールと周恩来の章がめちゃくちゃ気合が入ってて、明らかに筆が乗りまくっているんですよ。

えん:気合の違いが文面から感じられるレベルで違うんですね。

藤村:そのガチ恋ニクソンを楽しんでいただくっていう面でも面白いし、僕はフランスのことを詳しくないのでわからないですけど、ドゴールがすごい人だったんだなってわかるとかもあるので。そのメッセージをもらっただけで、僕は千種さんからいろんなものを教えてもらったというか。リーダーシップについて考えようって言って国家元首の評伝を渡されたら、あ、なるほど、本を一冊渡された時点で、もういただきみたいな感じだなと思って。ああ、すごいなって今考えると思いますね。

えん:いつも思うんですけど藤村さんの本の紹介が面白くて、藤村さんに紹介された本は読みたくなります。

藤村:この本は万人におすすめです。万人かはわからないけど、この本に興味を持ったら周恩来の評伝(『周恩来秘録』)もめちゃくちゃ面白いので読んでもらいたいけど、それはかなり好きな人にって感じかもしれないです。

歴史から学ぶために評伝や自伝を読む

えん:歴史の人から学ぶのが好きなんですか?

藤村:好きです。それはすごいやる。

えん:もともとってことですか?CTOになる前とか、働く前からなのか。

藤村:前からそうですね。人間は歴史とか過去から学ぶしかないんですよ。歴史から学ぶことは多くて、自分は哲学っていう一般化の極地みたいなことをやっていたんですけど、世の中っていうのは一般化できないことも多いし、複雑じゃないですか。複雑なことを知るには歴史は良くて、歴史から学んだことがごちゃごちゃのまま頭の引き出しにいっぱい入ってるんだと思います。

えん:なるほど。

藤村:歴史も面白いけど、僕は人物にフォーカスした歴史が好きなので評伝とか自伝を読むんですけど。なんだろうな、その人の複雑な歴史とかコンテキストや考え方が整理されないまま、そういう本に入ってるんで、その人の人生との対峙になるんですよね。自分の人間的なクオリティのせいで、ドゴールと対峙することは不可能なんですけど、けど、やっぱり三角測量じゃないけど、ああそうかみたいなことを思いながら芸の肥やしにしてるって感じかな。

何がきっかけで知ったのかは忘れたんですけど、ムガル帝国ってあるじゃないですか。

えん:あるじゃないですか。が、あんまりみんな「あるよね」ってならないと思います。

藤村:確かに。16世紀にインド亜大陸にあったイスラーム帝国なんですよ。ムガル帝国は、過去のイスラム教を国教とする国の中でも、リベラルな政策をとってうまくいってた時期もあったみたいな変わった国なんですよね。その創始者、建国太郎がバーブルっていう人で、英雄なんですね。政治家であり軍人であり、かつ文学を愛する文系野郎であり、メロンがめちゃくちゃ好きなお茶目な人みたいな。

えん:メロンが好きってこともわかるんですか?

藤村: マジでメロンの話が超出てくるんですよ。それが『バーブル・ナーマ』っていう文庫本3冊ぐらいのボリュームの本を書いていて。バーブルはそういう家の人なので、小さい頃から王様みたいな感じになるわけですよ。

で、王様になって国を治めたり奪われたり取ったりしていて、この国を征服して治めることにしたんだけど、制度の変更を早くやりすぎて、みんなが離れちゃった、やっぱり征服してすぐは、いくら正論でも急いじゃダメで、みんなの気持ちを考えないとダメだなみたいなことが書いてあるんですよ。お前は企業買収をしたCEOか!みたいな感じなんですよ。でも言ってることがマジで一緒で、参考になりすぎて生々しくて、っていうのがずらっと書いてある。で、多分個人の日記なんですよね。どこどこの男の子のことが好きになりすぎて毎日が上の空である、みたいなことも赤裸々に書いてあるんですよ。経営者のツイッターのサブアカみたいな感じで、全部赤裸々に書いてあってめっちゃ面白い。

めちゃくちゃメロンが好きで、どこどこのメロンはこうでこういう街があって、これこれこうでなんとかかんとかさんが治めてて、その次はなんとかかんとかさんが治めててみたいな。昔の歴史の本あるあるの、ひたすら人名が続くパートが続いたのちに「素晴らしいメロンがとれる」と一言だけ書いてあるんですけど、可愛いんですよね。

えん:編集者の人がもしそこに入っちゃったら、メロンの部分はカットされそう。

藤村:カットされていない雑味が異常にあるんですよね。ちょっと悔しいのは、現代では使われてないんですけど、チャガタイ語っていう今のトルコ語の系列の言語で(書かれていて)『バーブル・ナーマ』は、チャガタイ語文学の最高峰のひとつと言われていて。

多分「韻」がある詩の世界なので、定型詩もあった世界なので、イスラムの世界ってコーランがあって、あれって文章だけじゃなく、音声でもインパクトがあるものなんですよ。多分、チャガタイ語の文学も、音声的にも美しいものが多いはずなんです。でも、自分はチャガタイ語ができないので、それを味わえないのが翻訳文学の悲しみだなと思いながら読んでます。

えん:でも、基本的にはスタートアップ企業創業者の裏アカのツイッターを読んでるような気持ちで読める?

藤村:そうですね、赤裸々だから面白いですね。なんかでもよくないですか。ムガル帝国の君主も同じようなことで悩んでるんだなって。経営者のみなさんも、ぜひ読んだほうがいいと思います。スタートアップは、ムガル帝国よりは大変じゃないと思うんですよ。勇気づけられるし、バーブルは王様なわけですよ。取締役会で選任された人じゃないんですよね。王様は人格的な徳も求められるものが高いなって思いましたね。リーダーシップ論では『バーブル・ナーマ』はめちゃくちゃ面白くて、ゆっくり読み進めてますね。

えん:これもリーダーシップの本として読んでるんですね。

藤村:そういう観点で付箋を挟んでるところもあるし、このツイート面白いなって付箋を挟んでるところもある感じかな。あと本が、平凡社東洋文庫っていう箱入りの布張りなので、とにかく見た目が超かっこいいっていうのもテンションがめっちゃ上がります。

えん:なかなか布張りの本って見ないですよね 。

藤村:盛り上がりますよね。

藤村おすすめの評伝はコロコロコミック4冊分の厚さ

えん:歴史上には面白い人がたくさんいるんだなぁ。

藤村:います、やっぱ面白いですよ。面白くない人もいるので、それも面白いんですけど。こいつの評伝、全然面白くないなって人もいたりする。

えん:自分で書ける人はやっぱ自分で書いちゃうんですかね。

藤村:学者も評伝を書く文化があるのか、いろんな人の評伝がありますね。

えん:周りの人が書いて作られてるものもあると思うんですけど。

藤村:取材して書いてるものも多いですね。

えん:自分で書いている方が生々しそうでよさそうな気がする。

藤村:どっちもどっちだなぁ。僕が好きな評伝は『アイザイア・バーリン』アイザイア・バーリンっていう政治学者がいて、彼の評伝をマイケル・イグナティエフという政治学者でカナダで政治家もやっていた人が書いた。それはバーリンの分かり手の人が書いてるのでラブもあるし、資料的な価値もあるし、客観性もちょっと入ってたりもするので面白かったですね。

えん:分かり手が書くかどうかで違いそうですね。

藤村:アイザイア・バーリン』は、どちらかというと気持ちが近い人が書いてる本って感じですかね。あとは、ニクソンの同世代でキッシンジャーっていうアメリカの有名な政治家がいて、キッシンジャーの評伝をニーアル・ファーガソンっていう歴史学者が書いてるんですけど、ファーガソンの本もめちゃくちゃ面白いものが多い。『銃・病原菌・鉄』や『サピエンス全史』が好きな人は好きなはず。その人が、ニクソンキッシンジャーに一生懸命取材して書いてある本(『キッシンジャー 1923-1968 理想主義者 1』)があって、コロコロコミック2冊分ぐらいあるのでめちゃくちゃ大きいし、そこまでキッシンジャーに時間を投資したいかっていう問題があるんですけど。それも面白かったですね。歴史家としてのファーガソンキッシンジャーっていう本物の怪物みたいな人のバトルみたいな感じで、緊張感のある評伝で良かったですね。

えん:コロコロコミック2冊分は、ちょっと読む人を選びますね。

藤村:そう。夜酔っぱらっている時にAmazonで買って、届いたときに愕然としたというか。上下巻で1万円ぐらいするし、まえがきを読んでさらに愕然として、その2冊で上下巻の上巻らしいんですよ。

えん:おっと?

藤村:全部だとコロコロ4冊分ぐらいある。

えん:書く方もすごいですね。

藤村:まあ、ファーガソンは作品も多いですからね。無限に書けるか、実は何人かいるか、どっちかなんでしょうね。

えん:複数にいたか。

藤村:評伝はおすすめです。キッシンジャーだと重いと思うので、ヤマト運輸小倉昌男さんの『小倉昌男 経営学』とか。評伝というか自伝みたいな本で良かったですね。ポップでわかりやすくていいかもしれない。

えん:自伝の入り口として。

自伝、評伝系だと。 事業、ビジネスの近くにいる人にとってもいいんじゃないですかね。評伝の話をして終わっちゃいましたね。こういうもんですよ、論より動くもの.fmは。

えん:そうですね。そういうものだったはずなんですけど、私が編集しすぎちゃったのかな。

藤村:最近はイベントとかがあって、言いたいことが多かったっていうのもありますね。では、そんなところで今日の論より動くもの.fmは、なぜ評伝を読むのか、おすすめの評伝の話でほぼ終わってしまったのですが、終わりです。#論より動くもの で感想をお待ちしてます。あとは評伝が好きなエンジニアの方も、評伝が好きではないエンジニアの方も、ぜひ一緒に働かせてもらいたいなと思ってるので、Twitterとかでお声掛けください。

えん:新しいですね。

藤村:新作です。ではみなさん、ご機嫌よう。(完)





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