STORES Product Blog

こだわりを持ったお商売を支える「STORES」のテクノロジー部門のメンバーによるブログです。

私の好きなRubyで世の中に価値を届ける、わからないものをわかるための距離のつめ方【Rubyistめぐりvol.3 しおいさん 後編】

Rubyist Hotlinksにインスパイアされて始まったイベント『Rubyistめぐり』。第3回はしおいさん(塩井美咲さん)をゲストに迎えて、お話を聞きました。こちらは後編です。 hey.connpass.com

ホビーとしてのネットワーク

藤村:RubyKaigi 2021があり、そこから今回のRubyKaigiの発表に至るまでのルートを聞きたいです。

しおい:間にRubyKaigi 2022があるんですが、2021から2022までの間にちょっと落ち込んだりした時期があったという話をしていいですか?

藤村:もちろんです。

しおい:振り返ってみると自分はプログラマではない人生を30年以上ずっと生きていて、ほぼ33歳でプログラマになったので、そうなる前と後とで自分を構成しているいろんなものが変わったんですね。住む場所も、仕事も、人間関係も、趣味も、余暇の時間にやることも変わって、そうするとその歳にして自分が何なのか、自分のアイデンティティみたいなものがわからなくなってしまいました。

そんな中でRubyKaigi 2021に登壇して、結果もしかするといろんな人からいただいてる評価が実際の自分の実力とは全然違うんじゃないかと思ってしばらく落ち込んでいました。そのことについてしばらく考えていたのですが、ふと、少なくとも自分がこれまでやったことやアウトプットに対していただいたフィードバックって、過大評価ではなくて、やったことそのものに対する評価じゃないかなって気がついて。

そういう割り切りを得たことで、それまで自分には無理かもしれないと思っていたことに挑戦しようと思って、それが『Webで使えるmrubyシステムプログラミング入門』で勉強を始めたmrubyを、その時に興味があって触っていたWiresharkに組み込んで、RubyWiresharkディセクターをかけるようにする、というものでした。(Packet analysis with mruby on Wireshark - dRuby as example)。

藤村:なんでWiresharkを触ってたんですか?

しおい:みなさんのパソコンにも入ってますよね?

一同:(笑)

しおい:ずっとネットワークのことに興味があるですが、ネットワークの仕事をしているわけではないのでその分野は素人なんですよ。なのでネットワークについてもっと詳しくなりたいと思うと、パケットキャプチャは避けて通れないんじゃないかと思い、勉強をしました。結果的にRubyKaigiでお話しした、dRuby パケットをキャプチャするWiresharkディセクターを書く、というのが一番勉強になりました。

藤村:しおいさんは手を動かして学んでいるんだなと思いましたね。

しおい:そうですかね。どちらかというとインプットに比重を置いてしまってる気がします。あんまり心が強くないので、そこに越えないといけないハードルがある時は、気合をいれて立ち向かわなければいけなくて。なので手を動かすまでに時間がかかるタイプですね。写経をがんばってしまう。写経は写経さえすれば多分動くから。

藤村:まあでもディセクターは書かない。

しおい:実はWiresharkにはdRubyディセクターは最初から入ってるんですよね…

藤村:そうなんですね。

しおい:車輪の再発明をやりたくなってしまう。

藤村:今、再発明しようと思っている車輪はあるんですか?

しおい:今やってることは車輪の再発明ではないはず。どうなんだろ。大きい分類で言うと、他の人がすでにチャレンジしてると言えるかもしれないんですけど、結果的にそれはまだ世の中にでてないもので、できないかなと試しているものはあります。

藤村:まだ秘密ですか?

しおい:どうなんでしょう、やるって言ってしまったら後に引き返せなくなっちゃうから。

藤村:気になるな、この後に聞けばいいやつですね。

しおい:そうかもしれないですね。

藤村:そんな落ち込んでいた時期もあったが、やっぱり自分の出したものに対するフィードバックは過大評価でも過小評価でもないという気づきがあって、また向かい始めたのが2022年。

しおい:そうですね。で、RubyKaigi 2022でお話ししたのが、そのWiresharkのことですね。

藤村:反響はどうでしたか?

しおい:なんでしょう、実はRubyKaigi 2022では自分の登壇中にネットワークトラブルがあったりして、なのでそれも含めていろんな反響をいただいたんですが、一方で作ったものそのものに対しても面白かったという感想をくださる方が意外といまして。とくに知り合いではない方、初めてお話するような方でもそういったフィードバックをくださる方がいてありがたかったですね。ちょっとびっくりしました。

藤村:それは自信にもつながるというか。

しおい:そうですね。自信をつけるためにやっているわけではないはずなんですけどね。

藤村:そうですね。その頃は、昼は仕事をして、夜はミートアップに行ったり、自分のコードを書いたり、勉強したりっていう感じだったんですか?楽しかったですよね?

しおい:そうです。めちゃめちゃ楽しい。あと、そういえばRubyKaigiの前後に今の会社に転職しました。申し遅れましたがわたくし、株式会社エス・エム・エスという会社で働いておりますしおいと申します。よろしくお願いします。

藤村:ついに自己紹介が出てきた。

RubyKaigiのおかげで深掘れる

藤村:RubyKaigi 2022の後は次に何をしようかなといろいろ探していたんですか?

しおい:そうですね、RubyKaigiがあるおかげで、そこを目安に何かしらものを作ったり、深掘っていったりということを考えやすいんですけど、2022年と2023年の間って結構短かったんですよね。

藤村:そうですね、一瞬。

しおい:一瞬でしたよね。興味があることは常に本当にたくさんあるけど、とりあえず何からやればいいかなって思ったときに、RubyKaigi 2022を経て、まずRubyの内部実装に対して自分の解像度を上げたいなと思って。

Fukuoka.rbメンバーの方でその当時『Rubyのしくみ』を読んでいる方がいらして、それに触発されてまずこの本を読み始めました。難しい本なのでこれまでにも何度も挑戦してはよくわからない感じになっていたのですが、この時読み直してやっとちょっとわかったような気持ちになってきたので、『Rubyハッキングガイド(編集注:Ruby ソースコード完全解説)』を続けて読み始めました。

Rubyハッキングガイド』当時のRubyのバージョンは1.7だと思うんですけど、この時はまだYARVがない時代ですよね。なのでこの本の後半の評価器についての章は今のCRubyのコードには直結しないと思うんですが、それよりも前の章がすごく勉強になりました。その中に構文解析の章も含まれていて、こちらも難しいのでやっぱり何回読んでもよくわからないんですけど、5回くらい読んでやっとこういうことかなっていうのがちょっとわかり始めて、ちょっといじってみようかなと。

藤村:いじり始めたんですか?

しおい:Rubyハッキングガイド』の中に、Rubyにインクリメント・デクリメント演算子がない理由が紹介されてるんですよね。曰く、Rubyの世界においては、言語処理系とライブラリの機能の世界がわかれていて、両方の世界をまたぐ++みたいな機能は実装されてない、という話だったと思うんですけど。じゃあデザインでやっているのであれば、やろうと思えばできるのかなと思って、ちょっと試してみたくなってしまった。

藤村:試す方法はそれまでいろいろ本を読んで、なんとなく検討がついたんですか?

しおい:いや、全く。

藤村:どういう手がかりでそこを探しあてたんですか?

しおい:まず、parse.yを開きます。プラスイコールの時の処理がどうなっているのかが参考になるかなと思って、そこから調べ始めてみました。

藤村:いじって動かすまで距離がありましたか?

しおい:こういうふうにすればいいのかなっていうアイディアをとりあえず文章で書き出してはみたものの、具体的にどこをどうすればよいのかは見当もつかなくて、しばらく全く手が動かなかったんですね。

藤村:そこからブレイクスルーがあったんですか?

しおい:++って、要するに+=1じゃないですか。なので、+=1を呼んだ時の処理と、まったく同じ処理を書くとよさそう。なので++という新しいトークンを定義して、それに記号として名前付けて、パーサがその記号を受け取った時に+=1と同じ処理を行うっていう構文を定義したら動いてしまった。

藤村:5年前に始めたばかり…プログラムがあって、プログラムの動く仕組みがあって、プログラムの解析があってみたいなある程度メタレベルの仕事じゃないですか。そういうものへのハードルの異常ななさというか、そこでみんなつまづくんじゃないかと思うんですよね。

しおい:いや、つまづいてますよ。

藤村:それは乗り越え続けているっていう。

しおい:ありがたいことに、例えば手元にRubyソースコードをダウンロードしてコンパイルしようと思った時に、そのためのドキュメントがあるじゃないですか。ハードルが決して低いわけではないと思うんですけど、ちゃんとそのハードルを超えられるようなものを先人が残してくださっているのが、私にとってはすごくありがたいですね。

藤村:いきなりエリート養成講座みたいなところに入ってしまったが故にみんなやればできるけど難しそうと思ってしまうことを愚直にやるからできているっていう説と、しおいさんがすごいっていう説の両方があって、後者なんじゃないかな。

しおい:どうでしょうね。ただ、確かにすごい人は本当にすごいじゃないですか。彗星のように現れてあっという間に成果を出してしまうような人がRubyコミュニティにはたくさんいると思うんですけど、私は明確にそういうタイプではないですね。

一度に一つのことしかできない上に、一つのことやり始めるとそれしかできなくなっちゃうので、全力でそれをやってしまう。結果的に出てきたものが、わりとわかりやすくて説明しやすいみたいな。

藤村:なるほどな。みなさんそれぞれクエスチョンマークと、なるほどみたいなところが両方あると思うんですけど、ちょっと早いですけど、このタイミングですでになんだろうと、どういうことなんだろうみたいなことがあると思うので。質問があれば手を挙げてください。

「一番の下手くそでいよう」

参加者:例えばソースコードを読んでみたりとか、ミドルウェアを作ってみたりとか、私はちょっと難しそうだな、それに仕事で必要なわけでもないしって思ってそこのハードルをなかなか超えられないところがあるんですけど。お話を伺っているとそこをやすやすと超えてしまっているように見えます。でもそこを超えるまで苦労されているということも当然あると思うんですけれども、そこを超えるモチベーションっていうのはどこからわいてきているのかが気になります。

しおい:ありがとうございます。Asakusa.rbに行き続けているのが影響としては大きい気がしてまして。松田さんが私に伝授してくださった、『情熱プログラマー』の最初の方で紹介されている「一番の下手くそでいよう」っていう言葉があるんですが、Asakusa.rbが私にとってずっとそういう場所なんです。周りのすごいRubyistたちがやっていることって私から見るとかっこいいし、自分もそういうふうになりたいなという気持ちが働いていると思います。

参加者:ありがとうございます。

藤村:まだ「一番の下手くそ」と自分ではお考えなんでしょうか?

一同:(笑)

しおい:まだまだ、まだまだ、まだまだ若輩者です。

Asakusa.rbに行き続けるモチベーション

参加者:Asakusa.rbに限らずいろんなところに1回来てくれる人っていっぱいいるんですけど、ずっと来てくれる人ってほとんどいなくて、しおいさんは数少ないずっと行き続けているメンバーのうちの1人だと思うんですけど、そっちのモチベは何ですか?

しおい:それがまさにFukuoka.rbのLT会の時にうづらさんがおっしゃっていた「行き続けているといいことがあるよ」っていう言葉で。わたしはそもそも人付き合いをする体力がある方ではないし、周りの人に絡みに行くことも苦手だし、みんなが喋っていることがわかるわけでもないんですが、でもとりあえず行き続けていれば何かいいことがあるのだな、と思っていました。

2回目に参加した時点で早速松田さんが私の名前を覚えてくださっていてちょっと感激しました。しかもその時に「しおいさんはこれを読むといいと思います」と『ホワイの(感動的)Rubyガイド』を進めてくださって、ありがたかったです。

最初は、自分にとってちょっとハードルが高そうなところに行くときに自分がその場にふさわしい人間にならないといけない、自分がこの場に対して何かを提供しないといけないって思っていたんですが、松田さんからは「そういうことを考えなくてもいいですよ。しおいさんはもっとおいしい思いをしてください」って言われて、その言葉とともに「一番下手くそでいいよ」っていう言葉を教えてくださって。じゃあ特に理由はないけどいていいんだって思って行き続けた、行き続けてしまった。そうするとどんどん楽しいことが増えてくるっていう感じでした。

参加者:ありがとうございます。

仕事が楽しい

藤村:いい話のまま終わりそうな気がするんですけど、僕が聞いてみたかった全然関係ない質問をします。わからないけど興味あるトピックってどういうのがあるんですか?

しおい:わからんけど興味ある。常に目の前のことになってしまうので、今実装に挑戦しようとしているやつが今一番わからないです。

藤村:気になるなぁ。2番目はない?

しおい:一度に一つのことしかできない。

藤村:なるほどな。次回作の話を聞きたいけど、それなんだよなぁ。RubyistめぐりなんでRubyの話なんですけど、Ruby以外をのぞいてみたこともあるんですか?

しおい:Cですかね。

藤村:そういうことやね。

しおい:GitHubの自分のリポジトリの中に、tilっていうリポジトリを作ってるんですよね。毎日自分がちょっと学んだこと、ちょっと実装してみたり、試してみたり、いろいろ実験してみたものを全部まとめたリポジトリなんですけど、これまでにtilの中で書いたソースコードで一番多いのがC。Rubyよりもだいぶ多い。

藤村:仕事はCじゃないですよね?

しおい:Rubyです。

藤村:あ、仕事のことも聞いてみたかったんですけど、仕事はRailsを書いてるんですか?

しおい:Railsを書いてます。

藤村:Railsはどうですか?

しおい:Railsいいですよね。

藤村:そうかRailsか。Cプログラマになる道もあるんじゃないかって思うんですけど。Railsの周りとかは興味がある?Rackとかはそうか。

しおい:でも割と仕事のことは仕事のこと、余暇のことは余暇のことって自分の中で切り離してるので、仕事を離れるとRailsのことはちょっと一旦忘れてみてみたいな感じになりますね。

藤村:仕事だとRails一般のことになっちゃいますもんね。

しおい:仕事はすごい楽しいです。

藤村:仕事楽しいですか?

しおい:楽しいです。

藤村:楽しいポイントはどの辺なんですか?

しおい:転職する前の会社は、私がいた時には小さいチームで手探りで一つ一つ今のチームの課題を解決してやっていこうという体制だったんです。今の会社に入って、今のチームで初めてアジャイル開発をやってるんですね。それがちゃんとうまいこと回っている様子があり、それによって自分が実装したものが、価値あるものとしてどんどん世の中に出てるのが実感できて、それは本当にすごいことだと思います。

藤村:自分の仕事が人の役に立つのはかなり気分がいいですよね。

しおい:ですよね。

藤村:しかもプログラミングっていう割と自分の好きなやつで。

しおい:しかもRubyで。私の好きなRubyで。

藤村:そうですね。運がよくなりましたね。

しおい:そうなんですよ。

参加者:運がよくなったこと以外でRubyの何がいいと思いますか?

しおい:先にお伝えしておきたいんですけど、運がよくなったっていうのはもちろん副次的なものなので、運がいいからRubyが好きなわけではない。

私が考えているRubyの好きなところは2月にやりましたRuby30周年記念イベントLTでお話をしたので詳しくはそちらをご覧いただければと思うんですが、Rubyの好きなところは人間と一緒にプログラミングしてくれるところですね。私一人だと思いつかなかったようなアイディアを、Rubyと一緒にプログラミングしていることによって思いついたんじゃないかなって思うときがあります。

藤村:自分の作っているものを動かして、あれ?こうしたら?みたいなインタラクティブな感じがありますよね。

しおい:いろんな方法を用意してくれているので、あれも試してみたいなこれも試してみたいなってこともできますし。

藤村:作りながら発見してみたいなところがありますよね。

しおい:作りながら問題のことがどんどんわかっていくところがありますよね。

C言語は好き

参加者:C言語についてはどういう感情をお持ちですか?

しおい:難しい。難しいですよね。ルールはすごく少ないんですけど、癖がある気がしてまして、壊れやすいっていうのもあると思うんですけど。どちらかというとプログラミング言語としてのインターフェースの癖が強いなっていう印象です。趣味でやっているからかもしれないですけど、普通に好きですよ。

藤村:(質問者の)今の表情、記録しておきたかったですね。

僕が他に聞いてみたかったことは、新しいものを理解する時のやり方を聞いてみたい。というのもあまりにも新しいものを理解しすぎているだろうという感じがあるんですけど。インプットをたくさんするんですね。

しおい:できるものがあればっていう感じですね。

藤村:基礎から、どういう仕組みになっているかなってところから理解する感じなんですか?

しおい:多分世の中には2種類の人間がいて、例えば自分から少し離れたところに的があったとして、いきなりその的に向かってボールをパッと投げてみて、その当たったところと実際の当てたいところの距離感を測って、ちょっとずつ微調整していって最終的に的に当てるタイプの人。もう1種類が的と自分との間の距離をちょっとずつ詰めていって、ここまで行けば当たりそうっていうところまで行って当てるタイプの人がいると思ってるんですけど、私はおそらく後者なんですよね。

藤村:じゃあ近寄っていってるんですか?

しおい:簡単なところから始めて、最終的にやりたいところまでちょっとずつにじり寄っていって、ここまで行ければできるかなっていうのを頑張ろうとしていますね。でも、私がよく見かけるすごい人っていうのは前者のタイプの人が多いので、自分が前者の人間ではないということに対してコンプレックスがあった時期もありました。最近はキャラクターの問題かなと思って割り切れるようになりましたけど。

藤村:距離を詰めるのは、今までお話聞いてると何度も読むみたいな。

しおい:そうですね。

藤村:何度も読んでると、だんだん繋がってきてわかるのか、いきなりわかるのか、どちらですか?

しおい:同じ本を繰り返して読んでいてもなかなかわからないんですけど、違う文章で読んでみたり、違うサンプルプログラムを書いてみたりとか、ちょっと寄り道しながらもう一回最初に戻って読んでみたりすると、あ、こういうことだったのかってわかる。面白い現象としては、全然違う一切関係ないことを勉強してから戻ってくるとなぜかわかるようになってることがありますね。

藤村:僕は楽器を練習するんですけど、楽器を練習してて1日休むとうまくなっている時があるんですよ。

しおい:なるほど、近いかも。

藤村:似てるかもしれないし、似てないかもしれないけど、頭の中が整理されているのかもしれないですね。複数の角度からやるとわかるというか、こういうバックグラウンドだからこうだったんだってわかるみたいなのはありますよね。

しおい:そうですね。

プログラミング以外での関心事

藤村:プログラミング以外での関心事は?

しおい:Rubyコミュニティに来るまで、自分が人間が好きな人間なんだということを知らなかったんですけど、ここに来ていろんな人とやりとりをして、自分の経験が溜まっていくと実は人間が好きだったのかって思うようになりまして。なので、人間がどういうふうに社会の中で存在しているかについては興味がずっとありますね。

藤村:広いですね。本とか読むといいんですかね。

しおい:小説はそんなに読まないんですけど、今年に入って読んだ中では、『シンクロと自由』 という本がめちゃめちゃ面白かったです。福岡で介護施設を運営されている村瀬孝生さんという方が書かれているんですけど、自分が知っている人間の姿っていうものの常識を気持ちよく覆してくれる本でした。おすすめです。

藤村:面白そうですね。人々の本なんですね。

しおい:そうなんです。例えばそういう本を通じたりして人々の姿っていうものの全体をどんな感じかなっていうのを自分の目を通して、あるいは人の知見を借りて理解を深めていくっていうことについて興味があります。

藤村:プログラミングも人とのつながりのようなものですもんね。

しおい:そう思います。

参加者:業務とコミュニティのプログラミング言語って一緒のほうがモチベーションがあがったりしますか?

しおい:モチベーションでコミュニティをやっているわけではないんです。Rubyコミュニティに最初に顔を出した頃はもしかすると自分の役に立つかもとか自分の成長につながるかも、みたいな下心も多少あったと思うのですが、実際にそこであったこと全てが自分にとって便利で役に立つことだったわけではなくて、でも便利で役に立たなくても、自分にとっては全部大事なことなんです。

人生って仕事も含めた全部の時間じゃないじゃないですか。仕事も含めて人生の時間は楽しいに越したことないけど、仕事だけではない人生の時間を今楽しく過ごさせてもらっているのが、私にとってRubyコミュニティっていう場なんだと思います。なので結果的にそれは仕事に反映されたり、便利で役に立つことももちろんあるんですけど、どちらかというとRubyコミュニティにはそれも含めて、人生として行ってます。

参加者:仕事がPythonやCになったとしても問題ない。

しおい:そうですね、Rubyの方が幸せなのは多分間違いない。私はRubyが好きなので。

参加者:ありがとうございます。

しおい:ありがとうございます。

おすすめの喫茶店

参加者:おすすめの喫茶店は?よくコーヒーの写真がTwitterにあがっているので。

しおい:どういう喫茶店をお求めかによってちょっと答えが変わってくるかもしれないですね。

参加者:しおいさんが行ってる喫茶店アトリビュートみたいな、どういうものが備わっている喫茶店がお好みなのかが知りたいという問いだと思います。

しおい:なるほど。落ち着いて本が読めるような場所であってほしい。もちろん美味しいコーヒーをいただけて、できればちょっと甘いものもいただけて、そういう感じです。具体的なお店の名前をあげて答えた方がいい?

参加者:おまかせします。

しおい:時間帯によって落ち着けるかどうかが変わる気がするんですけど、新宿にあるDUGっていうジャズ喫茶がありまして、有名なお店だと思うんですけど、地下にあって、ちょっと照明が暗くて、もちろんジャズが流れていて、すごくいいんですよ。

参加者:何時ぐらいがいいですか?

しおい:お昼過ぎくらいに行くと、だいたい空いてます。

藤村:あ、ここだ。いいですよね。

しおい:いいですよね。

藤村:昼開いてるのかわからないですけど、ナルシスって歌舞伎町のど真ん中にあるジャズ喫茶がいいのでぜひ。

しおい:ありがとうございます。今度行ってみます。

藤村:この流れで質問とかがあれば。

これからプログラミングを始める人に、コミュニティに入ってくる人にかけたい言葉は?

参加者:うづらさんとか松田さんとか偉大な先達から影響を受けているんだなって思ったんですけども、逆にしおいさんが新しく入ってくるRubyistやコミュニティにどんな影響を与えたい、どういう言葉をかけてあげたらいいのかあったらぜひお聞きしたいです。

しおい:同じ言葉になってしまいますが、コミュニティにい続けているとなんかいいことがあるかもしれないっていう言葉を実体験としてお伝えできる気がしますね。

参加者:ありがとうございます。

藤村:説得力が違いますね。

参加者:勉強して自分の手で作るところまではみんなやられていると思うんですけど、そこからアウトプットするにはハードルがあると思います。それを当たり前のようにいっぱいやられていて、なんでそういうムーブができるのか不思議に思いました。

しおい:ありがとうございます。それもAsakusa.rbの先輩たちのおかげです。そこにいる人たちは呼吸をするようにイベントで登壇している人がたくさんいる。そういう人々の姿を見るとやっぱかっこいいなって思うし、自分もそういうのに憧れているのが結果的に行動として出てきたのがそんな感じなんじゃないかと思います。

参加者:憧れって偉大ですね。

藤村:他に質問はありますか?

参加者:一つのことを調べて勉強していて、調べているものの先も面白いじゃないですか。そうするとそちらに興味がうつっていったり、スタックが積まれていって、結果1ヶ月、2ヶ月後には違うことをやっていることってないですか? 

しおい:めちゃめちゃあります。あるんですけど、どこまでスタックが積まれていくかというのは自分の興味のつきるところだと思うんですよね。例えば、Cとはこんな深い付き合いになるとは思ってなかったですね。わかることが増えると他のことに突然つながったりすることがあったりするので、スタックが積まれれば積まれるほど自分の中にいろんなものがたまっているのかもしれないですね。

参加者:ちゃんと戻ってこられるのがすごいなって思う。

しおい:戻ってこられているのかな?

藤村:プログラマとしては戻ってこられないところにいってしまったという。

しおい:そうですか。

参加者:ありがとうございます。

参加者:交流会とかで話してて自分たちの会社ではこうやってますとか、この技術で詰まってますみたいな情報交換をしてそれを活かすイメージがあるんですけど。そういったことがあったりするんですか?

しおい:そういったこともあったと思いますが、そういうやりとりが発生するのって場による気がしますね。ちょっと難しい話なんですけど、勉強会とコミュニティって若干性格が違うものだなって思っています。自分の中では勉強会というのはそこで得てきたものを役に立てたいというモチベーションで行くところで、コミュニティは人との繋がり。例えばコミュニティのミートアップに行った時に結果的に情報交換していることもあるんですけど。

情報交換の場としてはどちらかというと勉強会という場のほうが自分の中でしっくりきていて、2020年よりも前はそういう勉強会の場が今よりもあった気がするので、そういう場所でいろいろな話を伺っていたような気がします。コロナが落ち着いてきたら、そういう場所が今後増えていくかもしれないですね。

参加者:ありがとうございます。

藤村:今のRubyRubyコミュニティがあって、今しおいさんがここにいるみたいなところもあると思うんですけど、これからプログラミングをやろうかなとか、プログラミングをちょっと始めたけど、これはなんだろうってなっている人がこの記事を読んだら励まされると思うんです。すごく励まされると思うんですよ。そういったこれからプログラミングをやるかもしれない人たちに人に一言もらってもいいですか?

しおい:そうですね。私の場合はなぜか途中から運が良くなってしまった、というのが大きいんですけど、それを除くとするならば、自分の尊敬する人とコミュニケーションをとれる場所にいることで、自分が思ってもなかったようなことを知ることができたり、できることが増えたりということがあるかもしれない。

もしかするとそれはコミュニティなのかもしれないし、会社なのかもしれないですが、そういう場にいることでなんか自分の人生に楽しいことがあるかもしれませんねってお伝えしたいです。

藤村:しおいさん、ありがとうございました。

しおい:ありがとうございました。(完)

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