STORES Product Blog

こだわりを持ったお商売を支える「STORES」のテクノロジー部門のメンバーによるブログです。

2022年の「推しプロ」開発を振り返る

こんにちは。宮里(@miyahirok)と申します。STORES 予約 のプロダクトマネージャーをしております。

年末の振り返りを兼ねて記事を書こうとアドベントカレンダーにエントリーしたのですが、師走の忙しさとサッカーW杯の興奮の合間で筆無精っぷりを発揮してしまいました。

STORES Advent Calendar 2022には STORES のPM・エンジニア陣がたくさん執筆しているので是非そちらも覗いてみてください。

product.st.inc

さて、タイトルにある「推しプロ」ですが、2022年の STORES の全社テーマとして年初(正確には2021年の年末)に掲げられたものです。 そういえば対外的には全然出てなかったワードなのですが、2022年はこれまで以上にプロダクト開発に力を入れるとともに「全員が自信と誇りを持って推せるプロダクトを目指す」という方針を掲げて、全職種、全メンバーでよいプロダクトをつくるために貢献するという文化を全社でつくってきました。

この記事では、2022年の STORES 予約 を「推せるプロダクト」にリニューアルするために行った取り組みをご紹介します。

推しプロへの課題はUI/UX

2022年初の時点で STORES 予約 が本当に推せるプロダクトだったかというと正直なところ心からYesとは言えない状況でした。 これは事業責任者である高槻さんの下記のインタビューnoteにもあるのですが、オーナーさんが使う管理画面にUI/UX上の課題が多くあり、セルフオンボーディングが難しかったり、使い勝手が良くなかったり、一部当たり前にあって欲しい機能が不足している状況だったからです。

people.st.inc

僕が入社した時、オーナーさんになりきって STORES 予約 を使ってみました。他社比較で使いやすいと評価は頂いていましたが、管理画面での情報が散らばっていて、どこで何をどう設定すればいいのかがわかりづらい状態でした。

前提として、STORES 予約 は前身のCoubic(クービック)として2013年にローンチしすでに8年以上開発を積み上げてきているのですが、PMFまでの紆余曲折もあり、2020年に STORES(当時hey) にジョインするまではUI/UXにほとんどリソースが裂けてない状況でした。

一方で STORES では、オーナーさんの体験を重視し「テンションの上がる管理画面をつくる」ということに強いこだわりを持っていました。

www.kandc.com

そしてもうひとつは「とにかくテンションの上がる管理画面を作ろう」ということ。私たちのサービスにおいて、オーナーさまが常に触れているのが管理画面です。
滞在時間の長い管理画面の操作においても“Just for Fun”を実践し、できる限りお商売を楽しんでほしい。ツールひとつとっても、扱うのが面倒くさいと思わせないようなつくりにしようとPdMたちに訴えています。

STORES 予約 も使っていてテンションがあがる、わくわくする管理画面にしたい。 BtoB SaaS の特性として、機能面は時間をかければ競合が真似をできてしまうため、最終的には同質化しやすく差別化が難しくなることが想定されます。そこで重要になってくることのひとつがUI/UXであることは言うまでもありません。

管理画面の「大通り」をリニューアルする

2022年は管理画面のUI/UXを大きく改善するために、全体の情報設計から見直しデザインを大きくアップデートしていきました。

グローバルナビゲーションや各種設定項目を整理・再配置して土台をつくりつつ、あたらしい画面は STORES 全体のデザインシステム「STAND」に準拠したUI仕様・スタイリングでデザインしました。 これは今後他の STORESブランド のプロダクトと連携した際にもオーナーさんが違和感なく利用できるようにするという意図もあります。STORES のデザインシステムについては以下の記事も参照してみてください。

logmi.jp

すべての画面を一気にリニューアルするのは現実的ではありません。強化すべき提供価値や向上させたいKPIから優先度をつけ、この一年地道に1つずつリリースをしてきました。

改善は「大通り」から行う、というのは最近プロダクトチームでも合言葉になっていますが、管理画面の中でもオーナーさんが日々の運用でよく利用する下記2つの既存画面について特に多くの課題や要望があり、コンセプトからリニューアルをすることにしました。

  • 予約を管理するカレンダー画面
  • 予約者の情報を一覧で管理する顧客リスト画面

「テンションが上がる」デザインへリニューアル

既存画面のリニューアル開発は、単純な新機能開発に比べてすでに課題や要望の解像度が高まっている分期待値が大きくなり、一度に多くの要望を叶えようと夢が膨らみやすい傾向があります。

また、オーナーさんは既存画面をつかった運用に慣れているため、(明らかに使い勝手が改善しているとしても)突然UIが変わってしまうと学習コストが発生し、忙しい中で業務に支障が出る可能性があります。当然不具合やユースケースの考慮漏れのリスクも伴います。

そのようなリニューアル開発の条件下でまずやるべきことは、あたらしいコンセプトの仮説検証です。一般的にも、デザインのリニューアルで炎上した事例はたくさん見聞きしますが、あたらしいコンセプトが受け入れられるかの不確実性はとても高いのです。現状維持バイアスと言われますが、人は慣れ親しんだものを好む傾向が強いというのはこの仕事をしていると切に感じます。

最速で仮説検証するためのβ版リリース戦略

仮説検証をどのように行うか? ペーパープロトタイプやモックアップなどが考えられますが、STORES では社外での検証には利用しておりません。オーナーさんにとっては、日々自身が使っている内容(データ)が表示されていないと、既存の画面からの変更をリアリティをもって認識しにくいため、よいフィードバックをいただくのが難しくなります。

すでに多くのユーザーがいる STORES 予約 ではリリースして使ってもらうのが一番効果的で、とにかく早くオーナーさんに実際の環境下で使ってもらって仮説の検証をすることが重要になります。

しかし、既存画面のリニューアルにおいては、運用に必要となる機能をすべて実装する場合のスコープは大きく、開発にも品質の担保にも時間がかかります。もし数ヶ月から半年以上をかけてリニューアルをした画面がオーナーさんに受け入れられず、そこから方針変更する場合の損失は計り知れません。コンセプトの検証ができる最小限の機能実装でスピーディにリリースをし、フィードバックを得たい。そのために常套手段ではありますが、β版を活用したリリース戦略を立ててリニューアル開発を進めていきました。

具体的には、まず既存画面の課題・要望を整理し、リニューアルデザインのコンセプトを定め、あるべき状態から要件を洗い出し、以下のように分類をします。

ここでのポイントは、検証が不要な(既存画面で必要性が検証済みの)機能は勇気をもってスコープ外とし、コンセプトの仮説検証に必要なコア機能に絞り込むことです。リニューアル開発でもMVPの考え方は有効です。最低限の機能でβ版としてリリースをしてコンセプトの検証をし、オーナーさんからのフィードバックを得ながら下記のような戦略でアップデートを重ねていくことで、不確実性を減らし、リスクを最小限にしながら、リニューアルを進めることができます。

フィードバックの収集にはアンケートが有効でした。CSチームが利用している管理画面上のチャットボットの仕組みを利用し、β版の画面から以下について回答をできるようにしてもらいました。

  • 新しい画面を利用したいと思うか
  • 上記のように回答した理由
  • ご意見・ご要望
  • ユーザーインタビューの可否

アンケート回答からあたらしいコンセプトが受け入れられているかを定量・定性で把握でき、特にネガティブな反応のオーナーさんへのインタビューでは課題の背景を伺うことで新たなインサイトを得ることができました。

また、コンセプトの検証に加えてリニューアルの検討で夢が膨らんだ「実現したいこと」の見極めをしていきます。想定していた要望のリクエストがなかったり、逆に優先度が低めだった機能の要望度が高かったりするなど、つくづく思い込みを排除することの重要さを感じました。

実際にあたらしい予約カレンダー画面のリニューアルにおいては、クローズドでの検証を経て実際にコンセプトを一度見直し、その後改良したβ版をオープンにして検証範囲を広げ、フィードバックをもとに要望の実装要否の見極めや課題の改善をしながら、正式版に向けて現在アップデートを進めています。

さいごに

年初から、年末には「今年めちゃくちゃ推せるようになったよね」「昨年と比べてこんなに進化したね」と言えるようにしたい、という思いを強くもってチーム一丸となって取り組んできましたが、今回紹介した既存画面のリニューアルや新規機能の追加など数多くリリースすることができ、この一年で本当にプロダクトは大きく進化しました。

その結果として、社内のメンバーはもちろん利用いただいているオーナーさんからも、最近すごい改善がされている、今後もどんどん使いやすく便利になっていく期待が持てる、との声を多くいただけるようになりました。日々忙しい中でも、プロダクトの進化を信じてアンケートに回答してくれたり、快くインタビューに応じてくれるオーナーさんには本当に感謝しかありません。

まだまだ価値を届けるために改善したい画面、実装したい機能が山ほどありますが、その広大な伸び代を含めて自信を持って推せるプロダクトになってきたと感じています。2023年にさらなる進化をするための仕込みも進めてきたので、次の1年の変化にもわくわくしています。

絶賛採用強化中ですので、職種問わず STORES 予約 のプロダクト開発に少しでも興味をもってくれた方は是非 @miyahirok までDMください!