この記事は STORES Advent Calendar 2024 の 11 日目の記事です。
STORES ブランドアプリ のチームで iOS エンジニアをしている榎本(@enomotok_)です。 本記事では、 STORES ブランドアプリ のプロダクトチームがカスタマーサクセスチーム(以下 CS チーム)と協業するために行っている、いくつかの取り組みについて紹介します。
STORES ブランドアプリ と CS チームの役割
私たちが開発している STORES ブランドアプリ は、店舗とECの顧客情報を一元管理できる管理画面とスマホアプリを提供するサービスです。これらにより、顧客体験を向上させ、効率的なマーケティング施策を実現させるというのがプロダクトのもたらす価値です。具体的には実店舗と EC で共通の会員証を発行して、クーポンを配布したり、ポイントの付与をしたり、パーソナライズした施策を行ったりすることができます。
B2B のサービスであるため、顧客となるオーナーさまには導入前から CS の担当者がつき、アプリの公開まで伴走します。また公開後も継続的にコミュニケーションをとりながら、施策の提案やサポートを通じて、サービスが生み出す価値を最大限に出来るよう支援しています。
協業する上での課題
普段から顧客と直接対話している CS チームは、顧客企業の課題を深く理解しているため、 CS チームの知見をプロダクト開発に活かすことができれば、より顧客に喜ばれるサービスを開発することができるようになります。そのためにプロダクトチームと CS チームが連携を強めていくことが重要ですが、効果的に協業していくために、いくつかの課題がありました。
新しく実装した機能を顧客に正しく使っていただくために、 CS チームのプロダクト理解をより簡単に進められるようにする必要があります。我々が開発しているブランドアプリは、 STORES という大きなプラットフォームの一部です。最近では、プロダクト間の連携を伴う利用が前提であり、 CS チームは膨大な仕様を把握して、顧客にとって役立つ機能を適切に提案していく必要があります。
また顧客と直接やりとりをしている CS チームだからこそ見える課題や、顧客のプロダクトに対する温度感を、エンジニアが正確に把握することは難しく、 CS チームからのフィードバックがプロダクトをよくしていく上で必要不可欠になってきています。
新しいプロダクトの機能が顧客のニーズから微妙にずれたものになっているとか、文言のような細かい部分で顧客がこだわるブランドイメージを損なうおそれがあるといったことを、機能をリリースする前に検知して、気持ちよく使ってもらえるプロダクトにしたいのです。
課題を解決するための取り組み
このような課題を解決するために、私たちのチームでは以下のような取り組みを行っています。
お便りコーナー 1
週に2回、 CS チームとの定期会議の時間を設けています。朝会の後、約15分で時間を区切って開催しています。
機能に関する問い合わせや、機能追加の相談、機能の見積もりといった内容をこの場で話し合います。議事録を事前に用意しておき、アジェンダをまとめておきます。持ち回りで担当者が前もって内容を確認・調査する工夫をしていて、短い時間で効果的な会議を開催することができています。
お便りコーナーによって、短いスパンで顧客の要望を素早く吸い上げ、機能開発のリスト(プロダクトバックログ)に反映することができています。また CS チームからの問い合わせをこの場に集約することで、日々の開発中に、五月雨で問い合わせを受けるといったことがなくなり、開発生産性に寄与する取り組みでもあります。ブランドアプリチームが出来て間もない頃から、続けられています。
スクラムにおけるスプリントレビューの工夫
ブランドアプリの開発はスクラムで行っています。そのため、スクラムのプロセスに沿って、スプリントの最終日には成果物を共有するスプリントレビューを実施しています。
スプリントレビューにはステークホルダーである CS チームも参加します。この中で CS チームからプロダクトに対するフィードバックをもらい、必要に応じてプロダクトに反映していきます。質問があればその場で回答し、疑問を解決します。
スプリントレビューは形骸化してしまいがちなイベントですが、プロセスを省略せずに行なっています。アプリの機能であれば実機を使ってデモを行ない、実際の見た目や振る舞いを確認してもらい、改善点や要望を直接共有します。また TestFlight の Public Link を共有することで、参加者に実際にアプリをダウンロードして操作してもらうといったこともしています。
新機能説明会で認識の齟齬を防ぐ
新機能のリリースにあたって、より詳細に機能を説明し、理解してもらうのがこの説明会です。大きめの機能をリリースするタイミングで、不定期で開催しています。スプリントレビューでの共有だけでは足りない部分を深掘りして説明しています。 CS チームのみならず、カスタマーサポートやセールスといった立場のメンバーにも参加してもらい、プロダクトの理解に役立ててもらっています。参加対象者が多いため、都合で参加できない人のために録画を残すようにして、あとでいつでも視聴できるように工夫しています。
新機能説明会は、過去に CS チームと開発チームの間で新機能に関する認識の齟齬があったことを踏まえて開催されるようになりました。この会を通じて、プロダクト理解が深まり、直接の顧客コミュニケーションや顧客向けの FAQ の執筆といった内容に役立てられているように思います。
ドキュメンテーションの充実
STORES では社内ドキュメントには esa を使っています。この esa は全ての社員が閲覧可能です。esa にプロダクトの運用タスクに関するドキュメントを作成し、知識が属人化しないようにしています。また新しい機能や画面の変更になるべく追従できるように継続的にメンテナンスを行なっています。
ドキュメンテーションに関しては、エンジニア各個人の努力に委ねられている部分ではあるので、まだ改善の余地があると個人的には感じています。来年以降取り組みたいテーマの1つです。
まとめ
こうした取り組みを通じて、プロダクトを開発するエンジニアチームと最も近い立場で顧客と伴走する CS チームが互いに協調してプロダクトのアウトカムを高められるよう、日々活動をしています。 CS チームとの接点を増やすことで、顧客フィードバックを得やすくなり、プロダクトの改善サイクルを適切に回すことができるようになってきています。
- お便りコーナーについては、チームのマネージャーである上杉が RSGT2024 での登壇のなかで詳しく説明しています。 https://www.youtube.com/watch?v=QAmIjNvGrOU↩