5月25日(水)に開催した【SmartHR×hey】PM10人規模の組織・プロダクトのリアル」にて、お話した内容を一部ご紹介します!
トークテーマの紹介
PM組織の課題ぶっちゃけトーク編として、
①プロダクト戦略ってどう作っていますか?
②採用以外の組織課題は何ですか?
をテーマに、SmartHRの安達さんとheyの松栄がお話しました。
PMの実際の取り組み・学び編として、
③両プロダクトとも数年の歴史があるプロダクト。レガシーコードゆえの課題とどう向き合っていますか?
④各社ともPMはどのような目標の持ち方をしていますか?特に数字目標は持っていますか?
⑤担当プロダクトの開発について、優先順位づけをどのようにやっていますか?
をテーマに、SmartHRの稲垣さんとheyの西岡がお話しました。
今回は事後アンケートで好評だった、④と⑤についてご紹介します。
登壇者の紹介
- SmartHR 執行役員 VP of Product 安達 隆
- SmartHR プロダクトマネージャー 稲垣 景子
- hey リテール事業本部 シニアプロダクトマネージャー 松栄 友希
- hey 予約事業本部 シニアプロダクトマネージャー 西岡 大揮
PMの目標の持ち方・評価について
西岡:去年の下半期は数値目標をおかず、プロダクトのリリースを目標にしていました。その結果、プロダクトリリースが事業成長に繋がっているのかという視点が抜けてしまいました。
今年の上半期は、PM2人とも事業に直結する数値を追っています。予約事業ではPMが2人いて、2人ともプロダクト全てを見る動き方をしている。また、SaaSの場合だとプロダクトの提供価値が事業の売上に直結すると思っているので、いいプロダクトを作ることも重要だけど、とはいえ売上があがっていなければ、それは本当にSaaSとしていいプロダクトなのかと。それぞれが事業数値目標を持って、プロダクトの提供価値を考えるようになりました。
松栄:補足すると、hey全体ではPMが13名いて、全員が事業数値目標を持っているかというとそうではない。予約事業は自分たちで事業数値目標を持つと決めて、持っています。
西岡:事業単体ごとに目標設計をするのでフレキシブル。事業責任者といっしょにKPIや数値を考えています。
稲垣:持ちたいとなった背景は共感できます。その場合に、持つ数値を事業目標にしたのはなぜですか?
西岡:具体的にいうと、新規MRR(Monthly Recurring Revenue、月次経常収益のこと)やチャーンレートを目標にしている。この数値をあげていく、機能をつくることで事業が成長する勢いを作りたいんですね。セールスやカスタマーサクセスなどのビジネスチームも同じ数値目標を持っているので、新規MRRをあげるために、チャーンを防ぐためにどういう機能を開発をするのか、議論の矛先が揃うようになりました。
ただ、ネガティブな面もあります。近視眼的になってしまうことがあり、売上の大きいオーナーさんの獲得や対応に意識がよってしまう。なので、セールスやカスタマーサクセスとコミュニケーションをとりつつ、プロダクトとして目指したい中長期ビジョン、プロダクト戦略の話をするという、振り子の動きが必要です。汎用性がある機能であることは大前提ですが、中長期のことと、短期的にここを落としたくないというターゲットの真ん中をとるために、個別でヒアリングをしたり、ユースケースをあわせにいくことがあります。
稲垣:まさにそういうことが聞きたくて質問しました。基盤の開発をするのと、目の前の数値を追うのはギャップが発生する。比重をあらかじめ決めておかないと、目標を勇気を持って追いにくいんではないかと。その決断にすごいなぁと思いつつ、どうしてるのかなと。
西岡:個人的には人は人を評価できないって割り切りがあるので、みんなの方向性が揃えばいいなと思ってて。評価をツールとして使っているところはあります。
稲垣:いいですね。
安達:松栄さん的にはどう思うんですか?
松栄:ここも事業部によって全然違います。私のところはメンバーがいて、ていねいな目標設定と評価をしているチームです。正しく評価することも大事だけど、まず目標設定や評価で、本人が前向きに自分の課題に取り組める状態をつくれるかが大事だと思っている。上司に頑張りをわかってもらえなかっただけ、自分はよかったのに外的要因が悪かったから悪い評価になった、と感じていては意味がないんですよね。ここまでが外的要因で、ここまでが内的要因、どこまでがコントローラブルで、どこまでがアンコントローラブルなのか。半期評価だけど、途中で何回かフィードバックをしている。その時にグッドポイントも返すので、認めてもらえていることを認識してもらいながら、ここは違ったかもというのを前向きにとらえて日々仕事に取り組めるようにしています。
安達:何が外部要因で何が内部要因か、きれいに分けるのは難しくないですか?
松栄:めっちゃ難しいです。ただきれいに分けられることよりも、そこに対して、本人の認識がずれていないかが大事。私はここまでが外部要因だと思う、あなたの認識とズレがある、それに対してあなたはどう思うかという対話をしている。本人が前向きに走れることが大事なので、そこに落とし所を見つけていますね。
安達:めっちゃ見てないといけないですよね。その人が普段どういう風に仕事をしているのかを知っていないと、フィードバックできないですよね。
松栄:めちゃくちゃ細かくは見れてないかもしれないけど、極力こまめに見るようにしているし、キャッチアップしようとしている。稲垣さんはどうですか?
稲垣:個人目標ではなく、プロダクトの目標の話になるんですが、プロダクトが古くて時間が経ってくると、事業成長とプロダクト成長を密接に結びつけるのが難しくなってくる。なので、プロダクトによって数値を明確に立てているところとそうじゃないところがある。新規プロダクトは機能拡張と受注や事業成長がダイレクトなので、密に連携をとって、PMもプロダクトのKPIを追っている印象があります。
私が担当しているのはSmartHRの中でも1番古いプロダクトなので、数値の目標は持たずにきてました。とはいえ、もうちょっと長い目で見た時に、どういうビジョンを目指すのか、それに向けたノーススターメトリック(企業が長期的に見て業績がどうなっているのを示す指標のこと)とKPI、大事なもの何を置きますかという整理をこの上半期でやっています。今後はそれを分解して、個人でも追えるといいなと。
松栄:ノーススターメトリックは本当にあるのかというのが、正直あると思うんですけど、どうですか?
稲垣:そうなんですよ。ノーススターメトリックの条件に、これが伸びたら事業も伸びるっていうのがあると思うんですけど、あれが1番難しいと思っていて。
逆にいうと、難しい難しいといって置かずにきていたことが、自分に対する逃げな感覚もあるので、一回試しに置いてみて、検証できればと思っている。半年後にめちゃくちゃ失敗でしたと言ってる可能性もあるんですが、まずはやってみようと。
西岡:僕らもノーススターメトリックを年初に立てたのですが、今は形骸化しています。機能開発でそれを伸ばすために注力しているかというと、そこまでできていない。ノーススターメトリックは、ビジネスチームに理解を得られているものなんですかね?ビジネスチーム観点だと、目の前の事業数値やお客さまが大事になりがちだと思うんですけど。
稲垣:そうですね、完全に全員に納得してもらうのは、会社の規模的にも難しい。そこまでのことは思っていないんですが、私が担当しているSmartHR本体を人事データベースとしてちゃんと活用してもらえるようにすることを考えている。それを、こういう順番で考えようとしていて、達成され、成長していくと、1番伸びるのはこの数値なんじゃないかという考え方を共有してフィードバックをもらうようにしている。全員の意見を盛り込んだノーススターメトリクスはよくないものになる気がするので、フィードバックをもらうのと、最終的に何にするのか決めるのはどこかで切り分けないといけないと思っています。
開発の優先順位と意志決定の振り返り
西岡:具体的な話を2つします。ひとつは、売上を目標にすると大手顧客の要望優先度があがってしまう、それに対してプロダクトの長期的戦略、マーケットの中でどこを狙うのかは、セールス、カスタマーサクセスからインプットを受けながら議論しています。
もうひとつは、この4月にやってよかったのが、直近半年くらいの優先順位を変更したときの振返りをやったんですね。機能をリリースした時の振り返りはやると思うんですが、優先順位を変更したときに、なんでその優先順位を変更したのか、それが正しかったのかという意思決定の振り返りをやってみた。プロダクトの優先順位を正しく決めるのは難しいという前提に立ちつつ、その間違いを可能な限り起こらないようにするためにどう仕組み化すればいいかをPM2人で議論して、かなり盛り上がりました。ここの優先順位はなんでこういう風になったのか、ふわっと決まった部分があったよね、これを再現しないためにはどうすればいいのかを議論できたのがよかった。
稲垣:決める時の話なんですか?
西岡:決める時の話です。なんでこうなったのかは振り返ると結構忘れている。MTGのその場の空気に流されたり、ファクトが確認できてなかったり。そのファクトはどう確認するのか、自分たちの優先順位の意思決定を振り返るのはやってよかったですね。
稲垣:逆に、その時の意思決定の流れを振り返るというよりも、その意思決定が正しかったのかという観点で振り返りをすることはありますか?
西岡:議論にはそれも含んでいました。なんで意思決定したのか、長期的にみた時にこのタイミングで意思決定する必要があったのか。機能をつくらずに事前検証できなかったのかとか、あるあるなミスなんですけど、それはやってよかったなと思います。
安達:うちでもやりたいですね。
稲垣:やりたいですね。2年前の自分にいいからまず話を聞けって言いたいことがある。
西岡:過去の自分と向き合うのはめっちゃつらいんですよね。なんでこんなしょぼいドキュメント書いてるねんって、めっちゃ思うんで。
安達:なんもわかってなかったなぁって。
西岡:大胆に仮説をはずしていたりとか。
安達:2年とかじゃなくて、2ヶ月くらいのレベルで起きる。2ヶ月前の自分、愚かすぎか。
松栄:わかる。
安達:めちゃくちゃ大事だなって思ったのが、PMがどうやって成長していくかを考えた時に、PMの1番重要なのは意思決定のスキル。それをどう身につけるのかを考えると、実地でやらないといけない。それはよく言われる話なんですけど、それを振り返って、学習するまでをワンセットにしないと、筋の悪い意思決定をし続けても成長しないよな、と西岡さんの話を聞いて思いました。
西岡:振り返るとまた同じ問題にあたっている、同じ失敗をしているというのが明らかにある。何かしら自分が悪かったんじゃないかと内省するのは非常に重要だと思います。
安達:抽象化すると同じミスをしている。
稲垣:何かの情報が足りないのか、評価基準間違えているとか、理由まとめられるところありそうですよね。
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