CTO 藤村がホストするPodcast、論より動くもの.fmの第18回を公開しました。今回はエンジニアの森弘となぜコードを書いているのか、音楽をやっているのかについて話しました。
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「業界最高水準ですか?」をスプリントのふりかえりで使っている
藤村:こんにちは、論より動くもの.fmです。論より動くもの.fmは、STORES のCTO 藤村が技術とか技術じゃないことについてざっくばらんに話すPodcastです。今日は STORES で一緒に働いているエンジニアの森弘さんに来てもらいました。森弘さんよろしくお願いします。
森弘:はい、よろしくお願いします。
藤村:簡単な自己紹介をしていただけますでしょうか。
森弘:私は2018年に STORES に入社して、それからずっと STORES のネットショップのサービスと STORES レジ の開発をやってます。2022年からエンジニアリングマネージャーもやっています。本日はよろしくお願いします。
藤村:最近は何をしてるんですか?
森弘:そうですね。組織の速度をもっと上げなきゃいけないとか、プロダクトがもう10年以上経っていてコードベースもガンガン変えていかなきゃいけないので、今までのやり方とはちょっと違った組織を作っていかなきゃいけないというところで、そういうことを中心にやったりとか。あとは単純に採用のところに力を入れたりとか、そんな感じのことをやってます。
藤村:組織マンとして活動してる感じなんですね、最近は。
森弘:そうですね、かなり組織マンの活動が多いですね。
藤村:なるほどな。コードを書きたくならないのかな。
森弘:コードはちょいちょい書いてますね。がっつりプロダクションに突っ込めるっていうコードは書けないですけど、それってこうやったらできませんか、みたいなコードを雑にガーって書くみたいなのはできてるって感じですね。
藤村:両方やるのが一番仕事としてのやった感もあるし、プログラマーとしても楽しいしで、いいですよね。
森弘:そうなんですよね。こうやったらできるんじゃないって思っちゃったら、手を動かしちゃうんですよね。手を動かして動いた、これでいけそうってなった頃には、でも多分俺これやるべきじゃなかったなってなってることが結構ありますね。
藤村:しかも手を動かしてからしばらく様々なことがおざなりになるっていうのが、僕の場合はよくあるパターン。
森弘:そうですね、私も全く同じことをしてますね。
藤村:(様々なことが)おざなりになっている時のコード書いてる状態ってほど楽しいものはないですね。
森弘:そうですね。これだけできてるんだったらもうちょっとやってもいいかなみたいになっちゃうんですよね。
藤村:事前の打ち合わせで、前々回に業界最高水準ですか?みたいな話をしたんですよ。その言葉を森弘さんが早速使っているということで、どう使ってるか聞いてみたいんですけど、どんなところで使ってしまったんですか?
森弘:そうですね。私はEMっていう立場でひとつの開発チームを見ているんですけど、その中でスクラムを採用していて振り返りとかあるんですよ。今回のスプリントってどうでしたか?どんな感じでしたかね?みたいなところで、チームとしても長く同じメンバーでやってきていて成熟しているところもあるので、今回も結構いい感じにいったねーみたいな雰囲気に振り返りがなることが多いんですよね。だからオッと思って「今回のスプリントの成果って業界最高水準でしたか?」と、そういう使い方をしたことがあります。
藤村:自分で言うのもなんだけど、あおり文句としての性能が高すぎるんですよね。
森弘:そうなんですよ。一応補足しておくと、これまでずっと同じチームでやってきて、そういうことを言ってもわいわいできる関係性があるから言えたっていうところがあるんで。マネージャーがそういうことを言い始めて、詰め始めたみたいなそういう文脈じゃないよっていうのはなんとか伝わらないかなと思ってるんですけど。
藤村:なんだろう、こういうのをハハハッと言いながら話せるのって、とはいえ(成果が)悪くなかったからじゃないですか。この話、そうでもない時にギャグでも出てくると結構きついみたいなところあるじゃないですか。明らかにうまくいってなかった時に「いやー最高水準でしたね」って言うと何かしらの政治的な意図とかそれか当てこすりかって感じになるじゃないですか。
森弘:そうですね。
藤村:うまくいってるときしか使えないから、それはそれでいいことなのかもしれない。一応この話は元ネタが実はあって、『プロフェッショナル原論(ちくま新書)』を最近読んだんですよ。これは、波頭亮さんっていう元マッキンゼーのコンサルタントのすごい人が書いた本で、プロフェッショナルっていうジャンルが仕事の中にはあって、会社の組織の中で働くのではなくピンの専門家として、それこそ業界最高水準のアウトプットを出すことを職業倫理としてやってきた人たちがいて、代表的なところでいうと医者、弁護士、会計士みたいなところ。
で、そういう人たちはこういうふうな行動原理でこういうふうに仕事をしていてみたいな話が書いてあるんですよ。それで自分も、確かに、業界最高水準かあ、ソフトウェア開発をしている上では業界最高水準でありたいな、って思ってたなと。俺もこのプロフェッショナリズムに心をおかされていたのかと思って。それでそんなことを前々回話しましたね。
この本では伝統的なプロフェッショナル、医者、弁護士、会計士みたいなところに加えて経営コンサルタントもプロフェッショナルで、クライアントの利益をとにかく最大化する、クライアントのアウトカムを最大化するっていうところを最大、最高の目的として職業ギルド的なもの中の価値観で誇り高く働いているみたいなことを書いてあって。ソフトウェア開発もちょっとそういうところがあるじゃないですか。
森弘:うんうん。
藤村:会社の中でどうっていうところも結構あるとは思うんだけど、にしてもコードを書く上ではベストのものを書きたいし、例えばソフトウェアエンジニアだからこそ気にするセキュリティとかの話もあったりするんで、その色合いが結構強いなと思って。それで前回ちょうどその本を数週間前に読んでいて、まだ脳内の浅いメモリにあったので、それが取り出されてきたっていう感じだったんですよね。やばい、いっぱい話したらその後何を話すかわかんなくなってきちゃった。
森弘:(笑)
音楽を続けるためにも目指すものが必要
藤村:森弘さんはバンドもやってるわけじゃないですか。
森弘:そうですね。
藤村:バンドはどうですか?業界最高水準ですか?
森弘:バンドの業界最高水準って難しいですよね。バンドってひとつひとつが目指すところが違うじゃないですか。バカーンって売れるぞと思ってやってるバンドもあれば、とにかくその日ライブハウスで大きな音を出したら勝ちみたいなバンドもいるから、そこを並べてどっちに業界最高水準ですかって聞いてもそういうことじゃないんだよな、みたいなところがあると思うんですよね。
藤村:単純な横並びの競争ではないっていうのはそうですよね。とはいえ、それぞれがそれぞれの仕方でベストのものを作り続けたり演奏し続けてないといいものができないみたいなところもあるような気もしていて。
森弘:一定の自分の中での満足感みたいなのって大事なのかなとか。ここは業界最高水準と離れてるぞって見え続けてる状態だと続けられるのかもしれないな。もっとよくできるはずだ、もっといいものを作れる。こうやったらもっと良くなりそうなアイディアがあるとか、そういったものを持ち続けてるうちは続けられるかもしれないですね。逆にもう業界最高水準との埋め方がわからなくなっちゃったとか、何をやっても業界最高水準に少しでも進んでいる感じがしないとなってくるとやめてしまうとか、そういうのはあるのかなと思いました。
藤村:多分その「最高水準に近づきたい」っていうモチベーション自体がそもそも一般的じゃないような気もするんですよね、僕。それってある種、自分たちの音楽、バンドをやっていたら当たり前というか、常にベストに近づく、ベストというか目指すものに近づくためにどうすればいいんや、練習はどんだけやればいいんだ、どんだけやってもたどりつけないから難しいところもあるんだけど、どうすれば?って、そんなことみんなずっと考えてるわけじゃないんじゃないかなという気もしてて。
森弘:ああそうなのかな。そうなのか。
藤村:バンドやってる人はそうだと思いますよ。でも例えば、例えばなんだろうな。僕コンビニのレジを打ってる時に業界最高水準のレジオペレーション目指してなかったですもん。
森弘:ああ、たしかに。そうかもしれないですね。
藤村:それを目指すのは、それはそれで楽しそうだけどな。
森弘:たしかに(笑)。すべての営みにおいて業界最高水準を求めていたかっていうと、そんなことは全くないですね、そう言われると。やっぱソフトウェア開発は楽しいから目指してると思ってるし、バンドもやっぱ自分の中ですごい大事なライフワークだから 業界最高水準を目指してやってると思ってるけど、全部に対してそういうモチベーションで挑んでるかって言ったら そんなわけではないなぁって思いました。
藤村:そうそう。そういうモチベーションでできる仕事じゃないですか、ソフトウェア開発って。
森弘:そうですね。
藤村:すごい不思議な仕事だなってよく思うんですよ。
森弘:たしかにたしかにたしかに。一般的な職業倫理っていうとわかんないですけど、ちょっと当てはまらない時もあるじゃないですか。残業はもちろんしちゃいけないけど、ゾーンに入った時に勤務時間とかじゃなくてやりたいからやってるんだみたいなゾーンに入る時もあるし。土曜日とか日曜日は働いちゃダメです、それはそうなんだけれども、なんかもうそんなことを置いといても取り掛かってみたい課題がそこにある瞬間ってやっぱあるじゃないですか。
そういうものってソフトウェア開発において一般的にこの方がいいでしょうみたいな、多分みんながみんな残業したくないし、土曜日日曜日は働きたくない、カレンダー通りに働きたいとか休みの日は休みたいっていうのがあるから、そういうルールができたっていうのはありつつも、ソフトウェア開発って一定そういうところじゃないところにモチベーションがあって、そういったところを超えてでもやりたい思いが生まれる仕事だなって思いました。
藤村:なんでやりたくなるんでしょうね。
森弘:なんでですかね。
藤村:いやーまじ謎なんだよな。昨日も夜、家に帰ってから、いやこのクエリはもっといけるだろうみたいな、そういうので夜10時くらいにPC開いちゃったりするわけですよ。で、15分くらい考えて、いややっぱもうわかんないな、明日やろうって。あれなんでだろう、いいものを作りたいからですかねって言おうと思ったけど、なんかそんなもんでもないよなって気もするっていう。
森弘:たしかに。なんかちゃんと説明できない感じがしますね。私も昨日夜、子どもを寝かしつけてたんですけど、頭の中はこの仕様よりはこっちの仕様の方がシンプルだし、たぶん使ってくれる人も喜んでくれる。しかも俺たちも早く走れる、こっちの方がいいんじゃねえかなみたいなことをずっと考えてたんですよね。当然その時間って勤怠は切ってないわけじゃないですか。
藤村:まあね。
森弘:だけどなんかやっぱ頭の中で自然とそういうことを考えちゃってるし、なんかその話を今日まさに昼会でちょっとこう思ってるんだっていう話をしてみたいなのもあるし。
藤村:突然脳がオンになってそのこと考え始めたりしませんか?
森弘:そうですね、わかります。
藤村:「あっ、てかさあ、ああいけるわ、あ、やっぱ無理だわ。」そういうのすごいありますよね。
森弘:あります、めっちゃありますね。あっ!てなったら、もうちょっとそのことを誰かに伝えたいとか、何かに書いておきたいとか。その時は今はこういう時間だからとか、今は勤務時間じゃないからとか関係なく、そのことをなんとかして形にしたいしか頭になくなるっていうのがありますね。
藤村:一方勤務時間中にもう今日わかんないなみたいな時もありますけど。
森弘:ありますね。
藤村:今日はもう無理だわ。
森弘:そうですね。この時間はとにかくやったら終わるものやろうみたいな、勤務中にもかかわらずそういうモードになることもある。
僕たちはなんでコードを書いているのだろうか
藤村:音楽も自分たちが目指しているものに何とか近づけたいっていう風にやってるわけじゃないですか。まあコードを書くのも、ソフトウェア開発も同じようなものだとすると、同じようなものとして音楽はじゃあなんでやってるんだって言われると、もうちょっとよくわからないですよね。僕もなんでやってるんだろうな。
森弘:私もなんでやってるかって言われるとちょっと困るかもしれない。まあでも突き詰めると楽しいからやってるになるかなと思いますね、音楽は。今バンドでやってるのでメンバーが4人いて、集まって、あーだこーだ言いながら音楽を作るんですけど、まあなんかそれ自体が面白いからやってるのがでかいと思いますね。
藤村:ソフトウェア開発はちょっとそれじゃない部分もあるよな。ソフトウェア開発ってそれ自体が面白いからやってるわけではないよな、どうなのかわかんなくなってきた自分でも。
森弘:(笑)
藤村:まあ熱中はできますよね。
森弘:熱中はできますね。
藤村:うん。なんだろう。やばいよな、従業員同士の、しかもCTOとマネージャーのPodcastで、俺たちなんでコード書いてるんですかねって。いやいや、そりゃ会社だから目的があるだろう、Just for Funだろうみたいな、そりゃそうなんだけど。改めて考えてみるとやっぱ謎なんですよね。一職業人というか、ソフトウェア開発という専門職として、なんでそんなことをこんなにやってるのかよくわかんない。
森弘:そうですね。でも、なんだろう、それは仕事だからやるっしょみたいなモチベーションではないのは確かかなと思ってて。仕事だからやらなきゃいけないでしょ以外のところから来てるモチベーションがあるのは事実だと思います。
藤村:しかも仕事だと思ってやり始めたりしたら、そうじゃない部分の自分のモチベーションみたいな盛り上がっちゃって、それも仕事としてやるみたいなパターンが多くないですか。
森弘:わかります、わかります。
藤村:謎ですよね。
森弘:謎だな、謎が多いな。
藤村:えんじぇるさん、なんかコメントないですか?突然振ってみよう。
えん:さっき森弘さんはバンドのみんなで集まって音楽作るのが楽しいって言ってたじゃないですか。コードは別に誰かと一緒に集まって書くとか、みんなで何かを作るとかじゃなくても、一人で黙々と作るのでも楽しいんですか?
森弘:一人で黙々と作るのも楽しいと思います。それで言うと、バンドもそうかもしれないと思っちゃって、一人で黙々と練習してる時も楽しいというか。これバンドでやるぞ、これやったるでみたいな、これちゃんとライブで弾けたらめっちゃいいぞみたいなのを一人で黙々とやってる時も楽しいですよね。
藤村:ミックス作業とかで沼ってる時も楽しいですよね。
森弘:そうですね。
藤村:やべえ、リバーブはここはいらない、もうちょっと遠くのほうがいいかな、いやローを切りすぎなのかなみたいな。
森弘:ここ、こだわっても多分聞く人は何の違いを感じないんだろうけどなっと思いながら。
藤村:そうそうそう。
森弘:わからないんだろうけど、気になっちゃうなみたいなのがありますね。
藤村:プログラミングってそういう細部の完成度の積み重ねが生産性に効いてくるって僕は持論を持ってるんですけど。音楽の場合、本当の細部はぶっちゃけ本当にどうでもいいという説がありますよね。
森弘:そうですね。両方の良さがあると思います。ソフトウェアの場合は何ていうんですかね、荒々しいのがいいみたいなのってないじゃないですか。わかんないですけど、あるのかもしれないけど。ソフトウェアの場合はやっぱり細部までちゃんと書かれているものがいいみたいなのがあると思うので。
藤村:たしかに。ライブアルバムとかシステムで動かしたくないですよね。
森弘:(笑)そうですね。そういう違いはあるかもしれない。
藤村:でも荒々しいやつもたまにあるけどな、あ、ここは勢いよく書いたね、みたいな。そういうのも結構好き。
森弘:わかります。なんかそういうのでにこやかになるみたいな、そういうので笑顔になるみたいなこともあると思うんですけど。
藤村:やっとるねぇみたいな。
森弘:そうですね。
藤村:ごめんでも普通に書き直しちゃうわ俺みたいな。標準的な方向にしちゃおうみたいな。ごめんなって思いながら。
森弘:音楽はそうしないですよね、それをそのままパッケージングするから。
藤村:そうですね。音楽の場合いじりすぎると大体よくなくなるっていうのはあるけど、ソフトウェアはちゃんときれいにしたほうがいい場合がほとんど。
えん:森弘さんはコードを書き始めた瞬間から楽しかったんですか?
森弘:コードを書き始めた瞬間から楽しかったか?コードを書き始めた瞬間から楽しかったのかな。どうなんだろう。
藤村:僕とかも最初は新卒でやってた仕事なんで、コンビニのレジとかと同じ感覚ですよ。レジを打ってるのと同じぐらいの熱量でやってました。
森弘:でも、最初から楽しかった気がしますね。これの積み重ねでソフトウェアってできるんだって思った記憶があります。そこは結構楽しかった。
藤村:すごい。ただただ早く帰りたかったな。
森弘:…これは一体どういう感じにまとまるんですか。
藤村:いや、今回はまじでまとまらないですよ。久々に本当の論より動くもの.fmらしいやつが録れたって思って、僕はもう満足してるんですけど。いや、こういう話だけにしたいんですよ。
森弘:そうなんですか。
藤村:堅いことが多いなと最近思ってたんで。
森弘:そうなんですか、序盤にテーマ設定が明確にあって、それに従って話が進んでいくから、そういうものを想像してたんですけど。まじで雑多に思ったことを喋ってるなって思ってて。俺の聞いてる論より動くもの.fmではないなと思ってたんですけど。
藤村:最近結構真面目な感じだったんだよね。
森弘:そうですね、そうですね。ずっと真面目だった印象がありますね。
藤村:いや、快南さんと話した時、マジで音楽の話しかしてないんですよ。
森弘:(笑)
藤村:僕は本当はああいうのをもっとやりたいんですよ。まあいいや、ちょっと時間が終わっちゃうので、そろそろ締めに入ろうと思います。締め?って感じ。ということで、今日は同僚のエンジニアの森弘さんに来ていただきました。森弘さん、ありがとうございます。
森弘:はい、ありがとうございました
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